漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「徹子の部屋」(テレビ朝日系 3月4日(金)13:00~)をウォッチした。
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黒柳徹子が数々の芸人を葬り去ってきた「徹子の部屋」にロバート(秋山竜次、馬場裕之、山本博)が初登場した。
なぜ徹子が芸人殺しかと言えば、まず名前を間違える。ナイツが出演した時は、「え~ハニワさん?」「塙(ハナワ)です」。ほら徹子の方が面白い。
次に芸人の持ちネタつぶし。小島よしおが全力で「はい、おっぱっぴー!」を披露すれば、間髪入れずに「そこでおしまい?」。
間寛平の「いくつになっても甘えんぼ」には、「ああ、そう」と普通に納得。芸人のあせりがこれほどリアルに感じられる番組も無い。
しかし以前、Wコロン(既に解散)が出た時は、徹子ねづっちに大興奮。
「『ととのいました』って言葉を聞くと、お母さんが『ご飯できましたよ』って言うくらい嬉しいの」。なぜなんだ、徹子。
そんなねづっちも、ワクワク徹子から「パンダ」「魚の目」「エビぞり」とエンドレス千本ノックでお題を出され、見事に散っていったのだ。
さてロバートです。秋山がTシャツをガバッとめくると裏側には故・梅宮辰夫の顔。おなじみの体モノマネTシャツ芸に徹子、「あらやだ、梅宮さんしばらくでしたね」とけっこう好感触。
だがここからが本番だ。
ロバート3人と徹子の前に電球とスイッチが置かれる。邪念を無くし、ただ目を開けて息をしてるだけの状態になったら電球のスイッチを押すというネタ(というかゲーム?)「邪念ゼロ」。
「邪念の無いとこ見ようよ、みんなで」と、徹子も前のめり。せ~のと邪念ゼロ状態に没入する。ピカッ、ひとつまたひとつ点灯する電球。ただ呼吸をするだけの虚無。いまだかつてこんな静かな「徹子の部屋」があっただろうか。
いやこれ最高の「キラー徹子」封じだわ。徹子を「無」にするって!と思ったのもつかのま。徹子、無から蘇(よみがえ)るなり「それでなんなのこれ?」。
「いや他にもネタあるんです、歌とかね」とロバートがワチャワチャする中、もうエンディングの音楽が流れ始める。
ル~ルル♪ルルルル~ルル♪「歌もあるの? でもいいです」。無慈悲な徹子の早口だ。「これからも続けてください、お笑いを。終わります」
「邪念ゼロ」からの「情けゼロ」。またひとつ芸人の墓標が立った。
※週刊朝日 2022年3月25日号