「当院では、乳房全切除術をした人の30~50%が再建を希望します。患者さんの中には、がんが治ればいいと再建を希望しない人や、再建のことまでイメージできないという人もいますが、ていねいに説明することで考えが変わり、根治のための治療を重視しつつ再建についても前向きに考えられるようになることもあります」(伊藤医師)
乳がんでは再発リスクを低減するため、術前や術後に薬物療法をおこなうことが多い。がん細胞の性質(サブタイプ)により、抗がん剤、分子標的薬、ホルモン剤を単独あるいは組み合わせて使用する。
■近年の抗がん剤は副作用も管理しやすい
術前薬物療法には、薬でがんを小さくして手術に臨めることに加え、術前の治療効果をみて術後により効果的な治療選択ができるというメリットもある。
「当院では、サブタイプやがんの大きさ、リンパ節転移があるかどうかなどによって、術前薬物療法をするかどうかを判断します」(岩田医師)
術後薬物療法では、サブタイプがホルモン受容体陽性の場合はホルモン療法をおこなう。またリンパ節に転移がある場合や、がん細胞の悪性度が高い場合、がん細胞の増殖スピードが速い場合などは抗がん剤を追加する。リンパ節転移があっても細胞の悪性度や増殖度は低いなど、抗がん剤を追加すべきか迷う場合には、再発リスクを測るために多遺伝子検査をおこなうことも。
「抗がん剤は副作用が心配されますが、近年では新たな薬も登場し副作用を管理しやすくなっています。将来の不安を解消するためにも、必要な人にはおすすめしています」(伊藤医師)
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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/
【取材した医師】
広島市立広島市民病院 乳腺外科主任部長 伊藤充矢 医師
愛知県がんセンター 副院長・乳腺科部部長 岩田広治 医師
(文/出村真理子)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より