ただ、基本的には核の抑止力とは相手の核使用に対する抑止なので、今回のように非核兵器国のウクライナとの関係では当てはまらない。
「今回の場合は抑止ではなく、むしろ武力による現状変更における核の恫喝(どうかつ)です」(西田教授)
さらに近年では、核搭載可能で、マッハ5以上の速度で飛ぶ極超音速ミサイルといったロシアの新兵器も注目されている。米国のブッシュ(子)政権が02年に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を失効させて、弾道ミサイル防衛(BMD)構築に走って以降、これを打ち破るために開発を進めてきた。
極超音速滑空体「アバンガルド」(最大速度マッハ20以上、射程6千キロ)を19年から配備したほか、極超音速空中発射弾道弾「キンジャール」(マッハ5~10、搭載航空機の片道飛行距離を含む射程2千キロ)を同年に試験配備。アバンガルドを含む異なる種類の核弾頭を搭載できる多弾頭ICBM「サルマート」(マッハ20以上、射程1万6千キロ)や極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」(マッハ5~6、射程500キロ)、さらに原子力推進核巡航ミサイル「ブレベストニク」(射程2万5千キロ以上)と原子力推進核魚雷「ポセイドン」(射程1万キロ)の開発も進めている。(朝日新聞記者・田井中雅人)
※AERA 2022年3月28日号より抜粋