Moss manの貴重な原画(イラスト:寄藤文平)
Moss manの貴重な原画(イラスト:寄藤文平)

 寄藤さんがここ2年ぐらい、個人的に教訓だと感じてるのが「生きている時間は、何らかの形で確認しないと時間として成立しない」ということだという。「なんか説教じみてて恐縮です」と笑う。

「例えば、何だかよくわからないうちに過ぎてしまう日ってありますよね。むしろそんな日のほうが多いかもしれない。『ああ、今日はなにもできなかった』と思うと、ちょっと罪悪感があったりもします。でも、そう思えるということは、その空白を確認できているわけです。無為な一日も、ちゃんと自分の時間になっているということです。その確認さえできてない時間って、たとえ有益な活動をしてたとしても、自分の時間になっていない感じがあるんですよね。その方が問題だと思うんですよ」

 空白を認識することで、その時間の存在を意識化する。無為な時間の存在を認識することは、「人生には無駄はない」と実感できることに繋がるのではないだろうか。

「スケジュールを組み立てるって、けっこう奇妙な行為だと思うんですよ。つい、有益であろうとしてしまうというか。手帳に書き込むのは意味のあることばかりじゃなくてもいい。チャート式の日記だと思って、その日の出来事を書くのも面白いかもしれない。今まで見た中で一番斬新だったのは、ゲージもチャートも無視して絵を描いてた人。びっくりしましたけど、そんな使い方も大歓迎です」

「手帳の話でここまで大きく話をふくらますのもどうかと思いますけど」と寄藤さんは苦笑するが、一方で「いっそ時間軸から離れたっていい」と、大胆な提案も。

「スケジュールを考える時間って、日記などを書くのと違って、ちょうどよく閉じてるけど、ちょうどよく開いてるんですよね。現実的で実践的で、他者がミュートされているわけでもない。それでいて誰に遠慮する必要もなく、時間に向かって想像力をはたらかせることができます。そうやって仕上がった『タイムライン』によって自分と自分の時間を確認する。僕としては、新生yPadをそういうツールだと考えています」

(取材・文/浅野裕見子)

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