
短期集中連載「起業は巡る」。第3シーズンに登場するのは、新たな技術で日本の改革を目指す若者たち。第6回は、企業法務をAIで改革する「LegalForce」の代表取締役CEO角田望氏だ。AERA 2022年3月28日号の記事の1回目。
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花王、サントリー、日本たばこ産業(JT)。日本を代表する大企業が続々と導入しているサービスがある。LegalForce(リーガルフォース)が提供するツールで、AI(人工知能)を使って契約文書のレビュー(点検)やリスクを発見する。2017年に弁護士の角田望と小笠原匡隆(まさたか)が立ち上げた。
角田は京都大学法学部、小笠原は東京大学法科大学院を出て、13年に大手の森・濱田松本法律事務所に入所した同期生だ。
2人は「法律×テクノロジーのリーガルテック」の可能性に目覚めて独立するにあたり、まずは法律事務所のZeLo(ゼロ)を立ち上げ、リーガルフォースの経営もする二刀流で行くことにした。だが法律は分かってもテクノロジーが分からない。そこにディー・エヌ・エー(DeNA)のエンジニアだった時武佑太が戦列に加わった。
■スター・ウォーズって何
社名の参考に米国のサイトを調べると、「リーガル○○」という会社はごまんとあり、○○によさそうな単語はほとんど使われていた。ぽっかり空いていたのが「フォース(力)」。誰もが「悪くない」と思ったが、時武がまぜっ返した。
「なんかスター・ウォーズみたいだよね」。フォースといえば、映画の登場人物が操る超常能力。「May the Force be with you(フォースとともにあらんことを)」は主人公らの決めぜりふだ。
みんなが「なるほど」という顔をしたが、角田だけはキョトンとしている。
「フォースって知らない?」
「うん」
「スター・ウォーズは?」
「観(み)たことない」
(弁護士になるのって大変なんだ)と時武は思った。