■病理診断の結果次第で追加手術になることも

 術後の病理診断の結果、術前は1%未満だと考えられていたリンパ節への転移リスクが、1%以上だと判明することも。そうなると病変周囲のリンパ節を切除する追加手術になるが、患者からは、次のような相談がよく寄せられるという。

「転移のリスクが20%なら、80%の確率で、手術で胃を切ったことが無駄になってしまう。追加手術は転移が見つかってからにできませんか」

 この問いに、小野医師はこう答えているという。

「がんの転移がわかったときには、手術で取りきれない状態であることが多い。手術を受けるなら早めに、と伝えています」

 なかには「追加手術の可能性があるなら、最初から手術を受けてしまいたい」という患者もいるそうだが、両医師とも、まずは内視鏡治療を受け、胃の温存を優先することを推奨する。

■粘膜下層まで達したがんは、ごくまれに転移する

 チャートのケースでは、内視鏡治療でがんを取りきることができ、追加手術は不要と判断。経過観察になった。粘膜内のがんであれば、年1~2回の内視鏡検査で経過を見るのが一般的だ。これが粘膜下層まで達したがんでは対応が異なる。

「粘膜下層に及んだがんでも、リンパ節転移のリスクが1%未満という条件を満たせば、内視鏡治療をおこなうことがあります。根治と判断されれば経過観察になるのですが、ごくまれに転移が起きたという報告があるので、より慎重に詳しく診ていく必要があります」(並木医師)

 定期的な内視鏡検査に加えて、CT(コンピューター断層撮影)などを用い、再発に十分注意を払う必要がある。

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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

 【取材した医師】
都立多摩総合医療センター 消化器内科部長 並木 伸 医師
県立静岡がんセンター 副院長兼内視鏡科部長 小野裕之 医師

(文/近藤昭彦)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より