世界が目まぐるしく動いているので、目を離すとすぐに情勢についていけなくなりそうな気配である。このような時でもやはり日本はのんびりしている。平和な時代が続くとどこの世界でもこんなふうになってしまうのかもしれない。
江戸時代はまさに今の日本のように、平和で外敵もなく、数年に一度襲ってくる天変地異と飢饉だけが不安の要素だった。突然、海外からの船舶が渡来するようになり、困った幕府は見ないようにしたが、その後、日本人たちは混乱と困窮に喘ぐ生活へとまっしぐら、それまでほとんど選択肢になかった、海外への移民を目指す人が多く現れることとなった。
■ハワイへ最初に渡った移民たち
以前の稿でも触れたが、明治元年となる1868年ハワイへ向けた移民団が横浜から出港した。正確にはまだ江戸時代での出港予定だったため(戊辰戦争中)、新政府から見れば無許可渡航となってしまったこの人たちは、明治元年の渡航者という意味から「元年者」と呼ばれている。以前、手作りの神棚や仏壇のようなものが背景に映った色あせた写真をハワイのリサイクルショップで見かけたが、日本人移民たちの心の支えのようなものを見た気がした。移民たちは少しだけ豊かになった頃、自宅だけでなく自分たちの住む土地にお金を出し合い、祠を建てた。祀ったのは自分の先祖を含む「神さま」である。神の名前などない。
○海外にある最古の神社「ヒロ大神宮」
ハワイに最初に創建された神社は、ハワイ島のヒロにある「ヒロ大神宮」で、明治31(1898)年の明治天皇の誕生日(天長節、現・文化の日)に大和神社として建立された。この社は、ハワイ最古というだけでなく、日本国外にある最古の神社として、現在もヒロ国際空港から4キロほど離れた場所に位置している。祭神は、伊勢神宮と同じ天照大神と豊受大御神で、日本と同じようにお守りやご朱印をいただくこともできるし、絵馬も奉納できる。フラやカメハメハ大王などの朱印やハワイの花・オヒアレフアをあしらったお守りは華やかだ。残念ながら、現在ハワイ島にはヒロ大神宮以外は残っていない。
■オアフ島に集中する神社
ちなみにハワイ州の人口10大地域にはいる都市で、オアフ島以外なのは「ヒロ大神宮」のあるハワイ島のヒロとマウイ島のカフルイ(国際空港がある)だけで、ハワイ州の人口の7割近くはオアフ島に集中している(ホノルル国際空港のある島)。このせいでもないだろうが、ハワイに残る神社のほとんどはオアフ島にある。
「ヒロ大神宮」に次いで古いのが、明治36(1903)年に創建された「ハワイ大神宮」で、最初に祀られたのは「神さま」である。次いで、明治39(1906)年に「ハワイ出雲大社」が、島根県の出雲大社の分社として創建された。この他にもオアフ島には、「石鎚神社」「金刀比羅神社」「太宰府天満宮」「若宮稲荷神社」がある。