■すべての神社は破壊された
ハワイには日本仏教の寺院もあるが、元々日本固有の宗教である神道の社殿が海外に残っていることはかなり珍しい。ハワイ以外ではアメリカ本土とサイパン、ブラジルに残っているのみのようだ。ハワイに残っている神社も、第二次世界大戦後に神主や氏子たちの並々ならぬ努力の中で再建してきたもので、創建時の場所で復興できた社はない。第二次世界大戦中にことごとく、アメリカ政府によって破壊され、神主たちは勾留された。神道の神々は、天皇の先祖だということを知れば当然だったのかもしれないが、多くの神社は復活できなかったのである。
■復活できなかった神社の神々を合祀
それでも、終戦後すぐに「ハワイ出雲大社」は倉庫を社殿として活動を再開、その後、1万人以上の署名を集めて社殿返還を求めて運動を始めた。「ハワイ金刀比羅神社・ハワイ太宰府天満宮」も昭和25年に裁判で勝訴し、敷地を取り戻した。社名に金刀比羅と天満宮の名を冠しているが、実はこの社、オアフ島で復活できなかった23社の神々を合祀し、20柱以上の神が祀られている。合併された神社の名をみると、日本の地方を代表する大神社ばかりで、ハワイへ移民した日本人が全国から広く集まってきたことがよくわかる。
■米国大統領を祀る「ハワイ大神宮」
さて、最後に「ハワイ大神宮」について紹介しておこう。現在はワイキキから車で20分弱ほどの距離にある「クイーン・エマ・サマー・パレス」の奥に位置するが、このパレスはシャーマンがよいパワーを持つ場所として選んだ土地に建てられた。「ハワイ大神宮」はそんな場所へ戦後移転してきた。
現在の祭神は、天照皇大神と天之御中主神、加えてアメリカの初代大統領・ジョージ・ワシントンと、アメリカ復興の大統領といわれるエイブラハム・リンカーン、そしてハワイの初代王さま・カメハメハ大王、7代国王・カラカウア大王と八百万命神である。世界中探しても、ワシントンやリンカーンが神となっているのは、ここハワイくらいであろう。
歴史を紐解くと、日本人がハワイへ渡ってきた頃は、まだハワイはハワイ王朝が治める王国で、苦しいながらも生きる糧のようなものがあったのだろう。その後、神社が各地に創建され始めたのは、アメリカにハワイが力づくで併合された直後からだ。移民の日本人たちにとっては、再び為政者が誰だかわからなくなる混乱の日々が始まったのだ。233年前の4月30日、ハワイで神となったジョージ・ワシントンが初代大統領に就任した。日本に住まう神と歴史には何らかの関係があるのではないかと改めて思う次第である。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)