◆使いこなせれば人生が変わる!

 上手にリモートを使いこなせれば、趣味も充実する。若いころにやりたくてもできなかった楽器の演奏を習いたいという高齢者が増えているが、今では多くの音楽教室がオンライン講座を開いている。野口さんは、将来的にはより高度なオンライン講座が当たり前になるかもしれないと言う。

「現在、自動車メーカーなどで使われているARグラス(拡張現実眼鏡)を用いれば、机の上にピアノの鍵盤をリアルに表示し、自分の指で演奏することも可能です。この技術が普及すれば、レッスンに通うことも調律も必要なくなります」

 コロナ禍で自粛を余儀なくされていた旅行も、可能性が広がる。すでにさまざまなサービスが提供されている。例えばVR(仮想現実)ゴーグルやスマホで、まるで現地にいるような旅行体験を家族で一緒にできるサービスがある。また、アマゾンが提供する「アマゾン・エクスプローラー」のような、現地ガイドがその土地を案内し、ショッピングまでできるサービスもある。

 野口さんのおススメはグーグルのストリートビューを使った、誰でもできる「バーチャルツアー」だ。「これが楽しすぎて困るんです」と野口さんは笑う。あまりに夢中になり、自身のSNSでそのツアー体験を公開したほどだ。

「なにしろ、このやり方なら今は存在しない街を旅することもできます。例えば、第2次世界大戦中の爆撃で灰燼に帰したドレスデン。インターネットなどで探すと戦前のドレスデンの写真がたくさん見つかります。この場所を、ストリートビューで現在の街並みと比べながら歩く。景色を見ながら歩いていると、街の姿が脳内で浮かび上がります。それが楽しくて、ほとんど中毒みたいにいろんな場所を歩き回りました。『野口悠紀雄』『バーチャルツアーがこんなに簡単に』で検索していただければ、私の感動がわかっていただけると思います」

 リモート技術を毛嫌いせずに、積極的に取り入れてはどうか。「人生が変わりますよ」。野口さんはそう太鼓判を押している。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号

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