ロシアによるウクライナ侵攻以降、平和なはずの日本でも不安が広がっている。ミサイルの危険を自分ごとだと感じ、もしもに備えて準備を急ぐ人も出てきた。AERA 2022年5月16日号の記事から紹介する。
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「またミサイルだ」
大型連休も後半に差し掛かった5月4日。防衛省は北朝鮮が弾道ミサイルを発射したと発表した。今年、13回目とみられる。
都内に住む女性(32)は、LINEに届いたニュース速報でミサイルの発射を知り、こう感じた。
「落ちてきたら、どこに逃げればいいんだろう」
このとき、女性がいたのは地上を走る電車のなか。もし本当にミサイルが落ちてきたら大変なことになる、とゾッとした。
「きっと窓は割れるから、近くにいると危ないよね。でも、電車って窓だらけ。逃げ場がない」「リスク回避には地下鉄を使うほうがいいんだろうか」
そんな話を友人にすると、考え過ぎだとたしなめられた。自分でもそうだとわかっているし、2017年にJアラートが鳴ったときは、そこまで気に留めていなかった。
ミサイルの危険を自分ごとだと感じるようになったのは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからだ。
「ウクライナの人たちも、侵攻が始まる前の日まで普通に暮らしていました。そう考えると他人事じゃありません」
こうした不安を抱えているのは、この女性だけではない。ウクライナ侵攻が始まった2月24日以降、こんな動きが起きている。
「核シェルターについて、2カ月で100件以上の問い合わせがありましたよ」と、住宅用防災シェルターの販売を行う「アンカーハウジング」代表の吉山和實(かずみ)さんは言う。
同社では17年から住宅の地下に設置するタイプのシェルターを販売している。日本上空を通過するミサイルの発射が繰り返された同年から、シェルターへの関心は高まっているという。
「あのときの問い合わせは30~50件くらいで、シェルターを販売したいという建設会社が中心でした。でも今は、『怖いから早く欲しい』という個人の方からの相談も増えています」(吉山さん)