
裏面には、
<乗車証は記名ご本人に限って有効です>
<期限が経過したとき又は記載事項が不明となったときは、無効です。至急ご返納願います>
とあり、発行日やパスの番号が書かれている。
立憲民主党所属の国会議員秘書は、
「申込書の様式は、もう何年も変わっていません。パスを使う議員なら、事務所には常時、何十枚も申込書は置いています。パスは、議員じゃなければ返却しなければならないけど、議院事務局もそれほどうるさく言ってこないので、返さない議員もいます。大半の国会議員は、パスは“チラ見せ”するだけで、JRの窓口もしっかりは確認しない。国会議員に『きちんと見せてください』なんて強くは言いづらいし、トラブルになりかねませんから」
と打ち明ける。
山下容疑者は、長年の国会議員の経験から学んだ“慣習”を悪用して犯行に及んだとみられる。おまけに、山下容疑者は申込書には、自民党の現職国会議員の名前を書き込んでいたという。
「山下容疑者は、名古屋駅の新幹線ホームで任意同行を求めた際もおとなしく、反抗する様子もなかった。容疑を認め、『国会議員時代を忘れられなかった』と動機を説明した。自民党の現職議員の名前を申込書に書いたことも取り調べて認めている。過去にも同様の手口で犯行に及んでいなかったか詳しく調べる」(捜査関係者)
事件がなければ、近く開催予定だった、立憲民主党岐阜県連の幹部会に山下容疑者も出席予定だったという。
「山下容疑者の立場は、ご意見番という感じですかね。議員でなくなって時間もずいぶん経過しているので、影響力はなかった。けれども会議では必ず発言し、元気そうで『自民党は』と悪口ばかり言っていた。それが自民党の国会議員の名前を書いて詐欺とは、恥ずかしい」
と先の岐阜県連幹部はため息をつく。
山下容疑者と共に、国会議員として活動していたこともある、同党の鉢呂吉雄参院議員は、
「現職時代は運輸関係に詳しく、ひょうひょうとした先輩で、いろいろ教えていただいたこともある。パスを悪用するなど絶対にあってはならない。なぜ議員でなくなった時点で、ルール通り返していないのか腹立たしい。実に悲しい思いだ」
と語った。
(AERA dot. 今西憲之)