漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「量産型リコ─プラモ女子の人生組み立て記─」(テレビ東京系 木曜24:30~)をウォッチした。
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駅ビルで服を買い、休日は家でゴロゴロ。将来の夢は「現状維持」という小向璃子は、何もかもが平均的なごく普通の「量産型女子」。
演じるのが乃木坂46の与田祐希という「量産型アイドル」の一員なのは、これけっこうなアイロニーなのか。
しかし、なんせテレビ東京。ドラマのテーマはまったくもって「量産型」じゃない。むしろ「ニッチ」。大手が狙わない小規模で見逃されやすい事業領域。そう、今回の領域はプラモデルだ。
のほほんOL璃子は、ひょんなことから古い商店街の模型店に足を踏み入れる。そこで出会ったのは、「機動戦士ガンダム」でおなじみ「量産型ザク」のプラモデル。
コワモテ店主・やっさん(田中要次)と気安いバイト・ちえみ(石川恵里加)の教えとはげましを受け、璃子は初めてプラモデルを組み上げる。
まずプラモの箱を開ける瞬間は、声をそろえて「ご開帳~!」。パーツが付いてる枠みたいなやつは「ランナー」。パーツとランナーをつないでいる「ゲート」をニッパーで切り離す行為は「解放」。
はみ出しを削るヤスリがけは通称「ヤスる」。なんて専門用語が飛び交う合間に、店主やっさんがおもむろにのたまう。
「失敗は時にギフトだ。思いきって好きなように直してみてもいい。プラモはどこまでも自由だ」
組み立てに没入するうちに、いつしか心の小さなトゲトゲもつるりとヤスリをかけられて、璃子自身が自由に解放されていくのだ。
思えばプラモってめちゃめちゃたくさんあるパーツを、まず切り分けて仕分けして、ひとつひとつを把握し、取扱説明書通りに組み立てる。必要なのは、段取りと注意力と集中力と細やかさ。
なんだろう、この人生に大切なことがいっぱい詰まっている感じ。私は必ずや山ほどあるパーツをとっちらかして、肝心の1個がどこかに行ってしまい、なんだったら違うパーツを無理やりねじこんでバキッと壊す気満々です。