AERA 2022年5月23日号より
AERA 2022年5月23日号より

■連邦議会議事堂の襲撃者共和党の下院議員候補に

 各州に先駆けて行われたオハイオ州の予備選挙は、トランプ派を活気づけている陰謀論信奉の極右派「Qアノン」候補者の勝利も導きだした。同州の下院議員候補で泡沫と思われていた空軍退役軍人、J・R・マジュースキー氏(42)だ。

 20年の大統領選挙では、1800平方メートルの庭に大量のペンキを使って「トランプ2020」の旗を描いた。今回の選挙戦のテレビCMでは、対人殺傷銃を担いでカチッと鳴らし、「アメリカを再び支配的な国にする」というメッセージを繰り返した。昨年1月6日、Qアノン派を多数含むトランプ支持者が首都ワシントンの連邦議会議事堂を襲撃した際も、参加していた。11月の本選挙では彼の選挙区で民主党の穏健派候補と一騎打ちとなり、当選する可能性もある。

 中間選挙は4年ごとの大統領選の真ん中の年に行われ、今回は米上院100議席のうち34議席と下院435の全議席が改選となるほか、50州中36州で州知事が改選となる。予備選挙は9月まで断続的に続く。

 現在、上院の議席数は民主党50対共和党50、下院では221対209と僅差で民主党が多数派を確保している。しかし、中間選挙は過去、野党が多数派を獲得したケースが多く、ホワイトハウスは与党、議会は野党の支配という「ねじれ」が生じる。このため、大統領は政策や法案を議会で成立させることができず、実質的に無力な「レームダック(死に体)」となる。今回、バイデン政権は発足2年足らずで死に体になるのかどうかという危機に直面している訳だ。

 政治ニュースサイト「ポリティコ」の中間選挙予測によると、上院において民主党の議席獲得見込みは11、共和党が18、激戦で予測が難しい議席が5。下院では民主党175、共和党197、激戦23で、まだ予測していない議席が40ある。上下院いずれも民主党にかなり厳しい見通しだ。

 過去の中間選挙と今回が最も異なるのは、過去の人であるはずのトランプ氏が推薦する候補者が全米に150人もいることだ。この候補者たちの当落次第で、24年大統領選挙にトランプ氏が再立候補する可能性も取りざたされる。国際政治学者でコンサルタント会社ユーラシア・グループ社長のイアン・ブレマー氏は、こう指摘する。

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