たとえば、宇宙旅行の市場規模を、19年の報告書はこう予測する。国内富裕層127万世帯の1%が宇宙旅行を希望すると仮定し、富裕層の平均旅行消費額176万円と宇宙旅行の適正価格を600万円として、1%の富裕層が3~4年に1回(富裕層の消費額と宇宙旅行の単価から算出)は宇宙旅行をするとした。その結果、474億円の市場規模となった。

宇宙ステーションに向け飛び立つソユーズ
宇宙ステーションに向け飛び立つソユーズ

■屋根がないと見られてしまう

 また報告書は、宇宙レジャーは、映画・アニメ・漫画・ゲームソフトなどのコンテンツや、テーマパークなどの娯楽事業のほか、今後、普及が想定される宇宙旅行からなる産業としている。その市場規模は、娯楽事業と宇宙旅行の試算を合算することで約2.2兆円とみている。

 一方、宇宙空間の通信が大容量化していくとみているのは、NTTデータ経営研究所パートナーの渡辺敏康さん。渡辺さんは「いまは少し前のWi-Fiくらいのレベルで通信できるようになっている。宇宙空間は真空で減衰しないので、光通信でもっと大容量でできるようになる」とみている。

 さらに、渡辺さんによると、宇宙空間では重力がないため、地上のような強度が必要なくなるという。宇宙に材料を打ち上げて、必要なものを宇宙でつくるようになると話す。「丈夫でなくても、3Dプリンターを使ってつくる」(渡辺さん)。3Dプリンターが宇宙の工場の役割をしてくれる。将来の月面基地計画などでは、こうした手法が活躍するのかもしれない。

 宇宙空間と地上が高速で大容量の通信システムで結ばれ、多数の人工衛星が地上の動きをカバーすると、プライバシーがなくなるとも言われる。将来はグーグルアースをリアルタイムで詳細に見るような状況になるだろうとも予想されている。「屋根がないと、何でも見えてくる」(東京海上日動の担当者)

 宇宙空間を活用するビジネスは、便利にもなれば、利用法を間違うと怖い部分もある。人工衛星やロケットの残骸など、宇宙ゴミのリスクも高まる。既存の業界や企業が様変わりする可能性があり、誰も予測していなかった新興企業が登場し、世界のトップ企業にのし上がるかもしれない。

 未知の部分の多い宇宙空間だが、ビジネスの世界では大きなフロンティアであることは間違いなさそうだ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年5月27日号