かつてレミさん宅に泥棒が入ったことがある。犯人はほどなく捕まった。その犯人が刑事に「家があまりに散らかっていたものだから、自分より先に泥棒が入ったと思った」と打ち明けたという。
「確かに私は掃除ができないけど、泥棒が入ったあとほど散らかってないわよ。いや、散らかってたかな?」と笑い飛ばす。
盗まれたのは100万円で、犯人が逮捕されてお金は戻ってきた。
「ちょうどその頃、和田さんが菊池寛賞を取って100万円もらったから、泥棒さんから戻ってきたお金と合わせて200万円ね。うちが急にお金持ちになっちゃった」
いや、戻ってきたお金は……と突っ込むのはもちろん野暮である。
家計はレミさんに任されていたが、管理とはほど遠かったようだ。
「お金はキッチンの引き出しに入れて、買い物のとき持っていく方式だったかな。あの頃はまだ、クレジットカード時代じゃなかったのよね。子どものお小遣いも、引き出しから渡していたの。ぜ~んぶアバウト。引き出しにお金が入っていることを子どもは知っていたけど、勝手に手をつけることもなかったと思う」
レミさんがポジティブな生き方を続けてきた秘訣(ひけつ)は何だろう。
「自分が嫌なことはしない! 嫌な人とは付き合わない! これだけで、ここまで来ちゃった。世の中にはいろんな人がいるでしょ。嫌な人ってピピッとくるのよね」
顔つきや目つきだけでなく、話していてもおもしろくない。だから避ける。
「しゃべり方も大事なのかな。嫌な人って電話の『もしもし』から暗いわよね」
不幸を運んできそうな人を勘で寄せつけないのがレミさん流の防衛術だ。
現在、世相は決して明るくないが、食べ物で元気になれるとレミさんは信じる。
「一番好きなものを食べて! 私の大好物は牛肉。サシがいっぱい入ったところね。ヒレも柔らくておいしい。ニンニクしょうゆが合う。そう、私、ニンニクが大好きなのね。パクチーも好き。あっ、トマトも好き。それから、えーとね……」
「胃下垂かな」とおどけて見せるほど食欲は旺盛だ。本人の元気に周りは引き込まれる。
「今度おじゃまさせてください」と言われたら、社交辞令かもしれないのに「今度来るってよ! いつがいいかな!?」と素直に喜び、大騒ぎ(レミさんのマネジャー談)。
その様子に周囲は元気をもらう。確かに本誌取材陣も元気をもらった。
(編集・文/大場宏明、編集部・中島晶子)
※アエラ増刊「AERA Money 2022夏号」より抜粋。平野レミさんはお金に関してにこだわりがありませんが、「AERA Money」では超ビギナー向けの資産運用術をわかりやすく解説しています!

