■屋外でもマスク 同調圧力も影響
前出の松本教授が言う。
「科学的根拠に基づけば、外で周りに誰もいない状況でマスクをしても意味はない。同調圧力もありますし、どこでもマスクをして対応するということに多くの人が慣れ、着用しているほうがやっぱり安心という人も多いのでしょう。そういう人に無理に外させようというものでもない。個人個人の考えでいいと思います」
屋内での着用については、当面は続けるべきだという。
「このウイルスは無症状の人からも感染しますが、無症状の人は検査を受けなければ気づく機会はほぼありません。今はみんながマスクをしているのである程度の感染規模に収まっていますが、そういう人たちがマスクを外すと一気に広がる可能性もある。今は全面的にマスクを外すことはまだ無理だなと思います」(松本教授)
では、人流抑制などさらなる対策の必要性についてはどう考えたらよいのか。政府は現時点では緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの行動制限は行わない方針だが、19日には後藤茂之厚生労働相が、病床逼迫などの事態が見込まれれば行動制限などの措置をとる可能性を示唆した。
こうした政府の態度について、前出の岩田教授はこう批判する。
「コロナの波が来るたびに我々が毎回大変な状況になるのは、政府のアクションがいつも遅いから。重症者が増え、病床が逼迫してからようやく動くので、効果が出るまで数週間のタイムラグが生じてしまう。目の前のことだけで判断し、大切なその先を考えるというリスクマネジメントの基本をやらない。悪いシナリオを考えることで防げることはたくさんあるんです」
とはいえ、新たに飲食店への営業自粛要請などに踏み切れば、国民からの強い反発も予想される。政府はどんなメッセージを打ち出していくべきなのか。前出の田中教授はこう語る。
「多くの人は、公共の場ではマスクをしたり、暑いなかでも換気をしたり、今でもしっかりと対策をしていると思いますが、飲み会の場になると気が緩んでマスクを外して大声で話したりしてしまいますよね。しかし『飲み会をするな』というのは酷でしょうから、『飲み会は週に1回にしましょう』とか『飲んだら3日ほど間隔を空けましょう』とか、健康管理につながるちょっとした工夫を呼びかけるメッセージを発出することが現実的でしょう」