ワクチンに関しては、副反応のリスクがゼロではないことを理解したうえで、あくまでも自分の判断で接種するかどうか決めるべきであることは言うまでもない。一方で、一部では陰謀論めいた過激な「反ワクチン」論が広まっている。3月には反ワクチン団体「神真都(やまと)Q会」のメンバーがワクチン接種会場となっていた東京ドームに押し入り、代表ら8人が逮捕される事件も発生している。家族など身近な人が急に「反ワクチン」となった場合、どのように向き合えばよいのか。厚生労働省の新型コロナ対策アドバイザリーボードメンバーで早稲田大学政治経済学術院の田中幹人教授はこう話す。
「正しい情報を与えれば考えを改めさせられる、という『上から目線』の発想はうまくいきません。ワクチンに効果があるのか迷っている人が受け入れやすい、様々な情報提供のアプローチを用意することが大切です。厚労省や東京都は充実したマジメなQ&Aを用意しています。一方で東京都小金井市では『ワクチン接種したネズミが2年で死んだと聞きました』という噂に『ネズミの寿命は2年です』と回答するQ&Aを掲載するなど、ユーモアで不安に応えています」
もう一つ、この間議論を呼び続けてきたテーマが「マスクを着用すべきかどうか」という問いだ。厚労省は、屋外でのマスクは人と距離が確保できない状態で会話するとき以外は着用の必要なしとアナウンスしているが、今でも屋外で多くの人がマスクを着用している。イギリスやフランス、アメリカなど諸外国では、すでにマスク着用義務が全面的に解除され、多くの人がマスクなしで街を歩く映像が流れているのとは対照的だ。前出の上理事長はこのように語る。
「飛沫が飛ぶのは30センチ程度ですから、よほど密着して会話をするとき以外、屋外でマスクをつける必要はないと思います。この春発表された海外の臨床研究によれば、サージカルマスクの効果は屋内でも感染リスクを2割下げる程度で、過大な期待を寄せるべきではない。ただ、大流行時はそれでも相当意味があり、アメリカではこの春まで、公共交通機関ではマスク着用が義務化されていました」