1973年11月、東京・元赤坂の東宮御所でペットのヒツジ「コロー」と礼宮さま(当時)
1973年11月、東京・元赤坂の東宮御所でペットのヒツジ「コロー」と礼宮さま(当時)

 江森さんは、「娘の結婚問題で秋篠宮がうまく立ち回れたとは思えない。父の責任を問う声も、世間から上がった。だが、娘の結婚に際しての父親の態度や取り組みに、正解があるはずがない」と解説する。<父親として、皇族として、悩みに悩み抜いている姿を側で見るのは辛かった>とも書いていた。

■眞子さんの「自己実現」

「皇族」と「一人の人間」のはざまで苦悩する秋篠宮さまの姿から、現在の皇室の問題を考えてほしい。それがこの本の眼目だ。だから眞子さんの結婚にも、江森さんは皇族の不自由さを見る。一般女性に比べ、恋愛の自由がかなり制約されている。ゆえに眞子さんは圭さんとの恋愛に前のめりになり、周囲の忠告に耳を貸さなくなった、と。

 その面もあると思う。が、同性として、それだけかなと思う。「男系男子」で継承していく皇室で、女性皇族は絶対的な非主流。「自己実現」を追い求めると、皇室の外に出るしかない。そのための唯一の手段は結婚だけ。そういう構造の中に眞子さんがいたことを思わずにいられない。

 それに拍車をかけたのが、この本で知った働く秋篠宮さま像だ。ジェンダーを理解する、女性にとって良い上司なのだ。

 悠仁さまが生まれた直後の記者会見で、女性皇族の役目を「私たち(男性皇族)と同じ」「社会の要請を受けて務めを果たす」「違いは全くない」と明言。皇嗣になってからは侍従、女官という男女別の職種をやめ、宮務官に統一した。江森さんには「これからは、女性の皇嗣職大夫や女性の宮務官長も十分にありえます」と語ったそうだ。

 こういう“上司”の下で公務という“仕事”をしながら、眞子さんは“寿退職”を強く望んだ。やはり構造の問題だと思う。が、ここからは違う話をする。

 江森さんが描写する秋篠宮邸の内部が不思議だった。例えば珍獣シファカの木彫りなど、マダガスカルに関連するものが並んでいるらしい通称「バオバブ部屋」。秋篠宮さまにとってマダガスカルは、眞子さんと訪れた思い出の地だから、まだわかる。「木彫りのクマの親子が出迎える」という部屋もある。母グマの木彫りは1メートル以上、とあった。お、大きい。3羽の鳥の剥製が並び、にらまれているようだという描写もあったから、きっとこれも大きいのだ。

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