「みなさんが不満、怒り、鬱屈を感じているとしたら、その感情は絶対に間違っていません。いまの世の中に、そういう感情を剥奪しようという風潮は間違いなくあります。そういったものに屈せず、希望は捨てないでほしい(後略)」(「AERA dot.」21年7月5日)。
21、22年、おもな文学賞受賞者の出身校は次のとおり。
*川端康成文学賞:千葉雅也(東京大)
*群像新人文学賞:島口大樹(横浜国立大)
*野間文芸新人賞:井戸川射子(関西学院大)
*小説現代長編新人賞:宇野碧(大阪外国語大<現・大阪大>)
*織田作之助賞:岸政彦(大阪市立大)
*新潮新人賞:久栖博季(弘前大)
*吉川英治文学新人賞:小田雅久仁(関西大)
<敬称略>
このなかに2人の大学教員がいる。
千葉雅也さんは立命館大大学院教授で専門は哲学、現代思想である。2019年に『デッドライン』(新潮社)で野間文芸新人賞を受賞した。この『デッドライン』と、『オーバーヒート』(新潮社)で芥川賞候補に2度なっている。最近では、『現代思想入門』(講談社現代新書)がベストセラーになった。
岸政彦さんは立命館大大学院教授で社会学を講じている。『断片的なものの社会学』(朝日出版社)は高く評価されており、同書のオビでは上野千鶴子さんが「読み終わるのが惜しいような本」と絶賛する。岸さんは『ビニール傘』(新潮社)で芥川賞候補になった。編著の『東京の生活史』(筑摩書房)では「紀伊國屋じんぶん大賞2022」大賞を受賞している。
芥川賞受賞、直木賞受賞の出身校ランキングではいずれも早稲田大が1位となっている。しかし、最近、早稲田以外の大学出身者が活躍している。早稲田大から多くの作家が輩出する、というこれまでの図式が変わろうとしている。