■「身の丈経営」再び

 しかも、不透明感が募る23年3月期は多くの企業が減益を予測し、企業収益は急減速するとみられている。トヨタも「原材料価格などの市況変動は過去に例がないレベルになっている」として、警戒感を強めている。

 そのため多くの会社は新たな危機に備え、利益を内部留保に回し、投資や賃上げには消極姿勢を見せ始めている。30年間で習い性となった「身の丈経営」が再び顔をのぞかせる。最近の物価上昇にも働く人が耐えられるだけの賃上げは、今後も期待できそうにない。 

 アジアからの留学生を支援しているNPO「アジアの新しい風」の上高子理事は「日本企業に就職しても賃金が上がらないので、日本企業に長く勤めたくないという留学生が増えている」と話す。このままでは留学生にも日本は見限られてしまいそうだ。(経済ジャーナリスト・安井孝之)

AERA 2022年6月13日号より抜粋

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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