■超大作はやはり男性が主人公
――映画の終盤は怒濤(どとう)の展開に。それぞれ問題を抱え、バラバラだった3姉妹が一致団結して父を打ち負かす。問題を抱えた30~40代の既婚女性が主人公だけに、出資を募るのは苦労した。男性優位の韓国社会では、3姉妹のような女性たちは、ある種、男性の脅威になると見られるとか。ソリや「愛の不時着」で北朝鮮の人民班長を演じた名バイプレーヤー、ソニョンが出演していても、厳しいのだ。
ただ、そういう難しい作品だと思われたにもかかわらず、出資をしてもらえたことは(プロデューサーとしての)やりがいを感じました。制作が不可能ではなかったことは幸いだったと思います。
韓国映画界では、#MeToo運動以降、女性を主人公にした物語がどんどん増えてきたと思います。ところが、そういう良い状況になってきたところでコロナに見舞われました。劇場にかけられる映画の報酬が減り、韓国映画界はまた大変な時期を迎えていますが、そんな中でも女性の物語は以前より増えてはいます。ただ、依然として超大作はやはり男性が主人公、中心になるケースが多く、女性が主人公の映画はいまだに低予算の映画が多い気がします。
――ところで、姉妹のいないムン・ソリは、この映画に出演して初めて「姉妹の関係を新しく知った」と言う。
3姉妹は同じように心に痛みを抱えていました。お互いを理解し合っていたので、強く連帯できたんだと思います。それがこの映画の良い点の一つ。彼女たちに限らず、今の時代を生きる人々にとって、この映画はとても心強いメッセージになったと思っています。
(ライター・坂口さゆり)
※週刊朝日 2022年7月1日号