監督からは次女役で頼むと言われましたが、私は三女のミオクをやりたかったんです。大酒を飲んだり、たばこを吸ったり、大声で叫んだり。あんなに自由気ままに生きることは映画の中でなければできないですから。でも、ミオクの年齢もありますので監督に三女をやりたいとは言えず、次女役で承知しました(笑)。実は、ソニョンさんも私と同じ意見だったんです。良いダンナさまに恵まれて、三女が運勢的には一番いいのではないかと。撮影中も「うらやましい」といつも二人で言っていました。
――ミヨンを演じるにあたっては、「大きな苦労はなかった」と言うが、ソリは現実には仏教徒。役作りのために毎週日曜日の教会通いは欠かさなかった。家でも1日1回は賛美歌をピアノで弾くほど、熱心な“キリスト教徒”に。
ミヨンは教会で最初はピアノの伴奏を担当し、のちに聖歌隊の指揮者になったというイメージを抱いていたんです。ただ、撮影が終わるとすぐに教会に行かなくなりました。神様は「あんなに一生懸命教会へ来ていたのに最近は来ないな、裏切ったのかな」と思っているかもしれません(笑)。
――理想の生活を手に入れたようなミヨンだが、夫の浮気相手の女子大生への反撃は戦慄(せんりつ)もの。裏切った夫への物言いも容赦がない。逆に、ヒスクは別れてもなお夫に金をせびられ、誰に対してもビクつき、反射的に謝ってしまう。酒浸りのミオクは酔ってはミヨンに電話をかけ、献身的な夫に暴力的で毒を吐きまくる……。なぜ3姉妹は問題を抱えるようになってしまったのか。その原因がやがて、彼女たちの幼少期に経験した父親の暴力にあることが明かされる。ヒスクと一番下の弟が、父親の激しい暴力の犠牲となっていたのだ。
ミヨンとミオクは直接的な暴力を振るわれてはいませんが、別の暴力を受けていたと私は解釈しました。二人はヒスクと弟が父親から殴られるのを常に間近で傍観するしかなかった。そんな二人も暴力の被害者だと思います。ミヨンが宗教に執着する理由も、常に姉が殴られている姿を見てひどい不安にさいなまれて生きてきたからこそ。母親も含めて、誰もが父親の暴力の被害者だったという気持ちで演じていました。