#MeToo運動以降、女性を主人公にした映画が増えている韓国で主要な女優賞を軒並み獲得した「三姉妹」が公開された。さまざまな困難を抱えながら“家父長制度”の呪縛を解いていく脚本にほれ込み、主演と同時にプロデューサーも引き受けた名優ムン・ソリにインタビューした。
【写真】ムン・ソリが主演兼プロデューサーを務めた映画「三姉妹」がこちら
* * *
――これは良い映画になる──。できたばかりの脚本を読んですぐ「そんな予感がした」と話すのは、デビュー作で韓国の名匠イ・チャンドンの薫陶を受けた名優ムン・ソリ。「三姉妹」では主演のみならず、プロデューサーも務めた。
物語はそれぞれ問題を抱えながら生きる3姉妹のいまを描きつつ、長年彼女たちを縛りつけていた“家父長制度”からの呪縛を解く。「娘たちの世代が、暴力や嫌悪の時代を越えて、明るく堂々と笑いながら生きていける社会になるようにという願いを込めた作品」(ソリ)だ。
私のところへ台本が送られてくるときは、監督や共演者、出資者や制作費の予算などがだいたいわかっていることが多いんです。でも、この「三姉妹」はイ・スンウォン監督が台本を書き上げてすぐに部屋から送ってくれた状態でしたので、「(良い映画になると思っても)本当に映画にできるのだろうか」という心配もありました。
そこで、監督とお会いして「この映画はぜひ作られてほしい」と伝えたんです。シナリオについてもいろいろと話し合ったのですが、そのうちふと「あれ? これってプロデューサーの会議では?」と思ったんですね。すると、「だったらムン・ソリさんもプロデューサーの肩書をつけたらどうですか」と誘われ、「少しでもお役に立てるのなら」と引き受けることになりました。
――舞台はソウル。花屋を営む長女ヒスク(キム・ソニョン)は反抗期の娘と暮らし、別れた夫の借金を返している。大丈夫なフリをしている彼女だが、最近、がんであることも発覚した。次女のミヨン(ソリ)は教会で聖歌隊の指揮者も務める熱心なキリスト教徒。大学教授の夫と1男1女に恵まれ、高級マンションに最近引っ越したばかり。一見幸せを絵に描いたような完璧な生活だが、あるとき、夫の浮気に気づく。三女のミオク(チャン・ユンジュ)は劇作家だがまったく作品が書けず酒浸りの日々。人の良い夫は必死に妻をサポートするが、ミオクの暴走は止まらない……。