仕事や勉強に取りかかっても、集中力が続かない──。そんな悩みを抱える人は少なくないだろう。どうすれば集中力を高めることができるのか。脳研究者の池谷裕二さんに脳の仕組みや活用法を聞いた。 AERA 2022年7月18-25日合併号の記事を紹介する。
【グラフ】集中力の目安、前頭葉から出る「ガンマ波」が40分を境に急激に変化!
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──いざ何かやろうとすると、なんだか気が散る、集中できない、ということが多々あります。集中力を高める方法はあるのでしょうか。
競走馬を見ると、走るときに目隠しをしている馬がいますよね。馬の視界は広いので、目隠しをすることで横に気が散るものがなくなり、走ることに集中できるからなんです。集中している状態というのは、ディストラクターがない、つまり気が散るものが少ないという状態。いかに周りのものに目がいかないようにするかが集中力の鍵です。
集中力といっても種類があります。たとえば図を見てください。これはネッカーキューブと言って、Aを頂点に見るのと、Bを頂点に見るのとで、図の見え方が変わりますよね? Aを頂点にした形で見続けようとしても、1分も持たないと思います。見え方が変わるというのは、集中力が切れたということです。そういう意味の集中力だと、人間は1分も持ちません。
でも、好きなことをやっていると、あっという間に2時間、3時間経っていませんか? それがいわゆる「ゾーン」と呼ばれるような状態。苦労しないで作業ができて、目の前にあるものだけをタスクとしてこなせる。逆に、嫌な作業をしているとき、集中力は15分すら持ちません。何を集中力というのかは、難しいところですね。
──集中しているとき、脳はどんな状態になっていますか?
集中力が高いときには、脳の前頭葉から出るガンマ波が高くなっています。ガンマ波は作業をし始めたときは高いんですが、すぐに落ちてしまいます。40分を境に急激に下がるので、40分が集中力が切れる一つの目安だと言うことはできると思います。
ガンマ波は初頭効果が高く、何度も出ます。気が乗らない作業の場合は、15分などと短く区切って休憩を入れながらやると、比較的集中力が高い状態で作業はできるかもしれません。