
東京パラリンピックは9月2日、テコンドーの男子61キロ級(K44)があり、田中光哉(29)が出場する。AERA2021年3月8日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。
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「足のボクシング」の異名を持つテコンドーで、ジャブのように前側の足で相手を突き、後ろ回し蹴りで仕留める。13キロ減量して軽量級に転向した田中光哉は、長いリーチを生かし、世界ランク上位の2人を破って代表の座を手にした。
「ランクが低いからこそ、誰にも警戒や研究されにくくて逆に有利。東京パラリンピックでも金メダルを狙っています」
東京都障害者スポーツ協会に勤務していた4年前。リオ大会での選手の活躍に刺激を受けてテコンドーを始めた。短期間で力をつけた田中の強さの理由を、洪君錫師範(全日本テコンドー協会パラ監督)は「手を抜かずに努力を続ける精神力の強さと習得力の高さ」と説明する。
入門して1カ月間は1日2時間反復横跳びなどの基礎練習ばかり。足裏の皮がむけて道場の床が血だらけになってもやめなかった。強靱な足腰は武器になった。
田中は長年、サッカーに打ち込んできた。同じ蹴る競技でも、サッカーは膝を曲げずに蹴るのに対し、テコンドーは膝を高く上げて蹴る。その違いに戸惑ったが、「僕はできないことをできるようにする過程がすごく好きなんです」。
小学生の頃。両腕の長さが違うので跳び箱に苦戦したが、放課後に担任の先生と練習し、両手を前後にずらしてつき、最も高い8段も跳べるようになった。
「障害のおかげでチャレンジが好きになったことが、今にうまくつながっている」
裏方から表舞台へ。今もパラスポーツ普及の夢は同じ。だから頂点は譲れない。
(編集部・深澤友紀)
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■テコンドー
1試合で100発も繰り出されるという多彩な蹴りが魅力の競技。パラリンピックでは東京大会から正式競技になり、手や腕に障害のある選手がキョルギと呼ばれる組手を行う。コートは八角形。2分×3ラウンドで、より多くのポイントを取った方が勝つ。胴に蹴りが入れば2点、180度の回し蹴りが決まれば3点、360度の回し蹴りは4点。五輪競技のテコンドーと違い、頭部への攻撃が反則でパンチは得点にならず、胴体への蹴り技のみがポイントとなる。
※AERA2021年3月8日号に掲載