東京パラリンピックは8月29日、車いすラグビーの準決勝2試合がある。日本にはチーム唯一の女子選手・倉橋香衣(30)がいる。AERA2020年2月17日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。
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タイヤのへりがボコボコにへこんだラグ車(競技用の車いす)を操り、ポニーテールの髪をなびかせた倉橋香衣が、男子選手の間からさっそうと現れた。
「はじかれると、車いすごとどのくらい飛ぶんだろうとか思えて楽しい」
転倒は日常茶飯事。しかも、最も障害の重いローポインターの倉橋の重要な役割は、ボールを持って動く味方選手を相手からガードするなどして、攻撃するスペースを作ること。自ら接触しにいく。
「ガードするには相手選手の横にぴったりくっつくんですが、角度とか、タイミングとか、数センチ、もしくは数ミリ単位で正確に動けないといけないんです」
アバウトじゃだめだ。神経をツンツンにとがらせて車いすを操作する細やかさが求められる。
「集中しちゃうと、ここにしわが寄るんですよ。やばい、やばい」
眉間を指して笑わせる。この明るさも、毎日きつくて痛いハードトレーニングを続ける仲間を救っている。
「男子の中で苦労すること? まったくないです。たぶんだけど、みんな私が女子だということを忘れてる(笑)。男女の区別なく戦えるところがいい」
女子選手1人につき持ち点が0.5プラスされ、チーム全体が有利になる。
「相手チームの強い男子と当たれると、自分に引き付けたってことでしょ? よっしゃ!ってうれしくなる」
試合中に倉橋の笑顔が見られるほどチームは勝利に近づく。
(ライター・島沢優子)
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■車いすラグビー
障害の程度に応じて0.5~3.5点まで持ち点があり、コート上の4人の合計が8点を超えてはいけない。ただし、女子1人につき持ち点の上限が0.5点上がる。バスケットボールと同サイズのコートで、ボールをもってゴールすれば1点。相手をブロックする、ボールを運ぶなど役割が与えられる頭脳的な競技。
※AERA2020年2月17日号に掲載