■日本経済にとってもマイナス要素となる

 その結果、経済全体での先行き懸念が徐々に高まっている。その兆候として、8月に入り、通貨ウォンの対ドル為替レートが下落した。足許、韓国の製造業PMIは50を上回っており、全体として景況感は良い。ただ、DRAM価格の下落によって、徐々に景気回復ペースは弱まる可能性がある。

 ウォン安のロジックは次の通りだ。サムスン電子のビジネスモデルに基づいて考えると、DRAM価格の調整圧力の高まりは、同社の業績悪化リスクを高める。サムスン電子の半導体事業の減速は韓国経済の輸出減少につながり、株式市場や雇用・所得環境にマイナスの影響を与える。

 中国経済の減速懸念の高まりも韓国経済にはマイナスだ。そうした要素に影響されて年末にかけての韓国経済の回復ペースがこれまでに比べていくぶんか鈍くなれば、利上げ期待は低下して内外の金利差は縮小し、海外投資家がウォンを保有する動機は弱まる。

 近年、韓国企業はわが国企業が製造する高純度の半導体の部材や製造装置を必要としてきた。同じことは、韓国以外の半導体メーカーにもあてはまる。素材や精密機械産業は足許の日本経済を下支えしている。世界のDRAMの需給逼迫に一服感が出始めたことは、わが国経済にとってマイナスの要素といえる。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)/法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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