「かつては浪人前提で高校生活を過ごすという生徒も多くいました。翠嵐は十数年前から、現役で第1志望に進学できるようにと改革を始め、その成果が出てきています」(前出の堅田さん)
東大や京大は私立の中高一貫校が目立つが、名古屋大、大阪大、九州大などは地元の名門校など公立校が奮闘しているのがわかる。
東京工業大への現役合格率トップも公立の小石川中等教育学校(東京都)だ。近年人気の公立中高一貫校の一つで、6年を通して課題探究型学習に力を入れている。論理的な表現や統計の基本から学び、最後には生徒一人ひとりがテーマを決めて論文を書き上げる。
「物理などの科学や美術作品の研究、アルゼンチンタンゴの節回しについてなど、生徒の興味は様々です」
数学科主任の古川一直教諭はそう説明する。専門家の話を聞きたいと思ったときには、大学教授や各界の著名人を招き、「サイエンスカフェ」を開く。19年には、ジャズピアニストでSTEAM教育者の著名人が講演会を実施。大学などとは教師が交渉するが、講師を指名するのは生徒主体のこともある。
手を動かすことも重視する。理科の実験室はオープンラボとして開放され、放課後になると授業の追実験や自己の研究に取り組む生徒たちの姿がある。理科主任の加藤優太教諭は言う。
「資料集の写真では簡単に見えても実際にやってみるとうまくいかないことも多いんです」
成功するまで何度も繰り返し挑戦することで、思考力やコミュニケーション力が養える。実験内容は大学の前倒しといった高度なものだけではなく「教科書に沿って進めている」と話す。
ドラえもんの歌にあるような
理数教育に力を入れる学校もある。私立の中高一貫校、世田谷学園(東京都)では21年度に理数コースを新設。山本慈訓(じくん)校長は言う。
「文理を問わずAIやプログラミングの素養が必要になるなか、社会は優秀な理数系出身者を必要としています。世田谷学園ではもともと生徒の6割が理系志望。体験を重視した理数系のプログラムを増やしていきます」