現役志向や理系志向が高まったといわれる今年の受験。もともと理系の生徒が集まる傾向がある灘でも変化が起きていた。AERA 2021年4月19日号の特集「難関大学に現役合格できる高校」から。
【難関大に強い高校の合格ランキングの続き、「全国版121校」はこちら!】
* * *
現役合格率で東の横綱が筑波大学附属駒場(東京都)なら、西の横綱は灘(兵庫県)だ。今年の卒業生216人のうち、東大に75人、京都大にも21人の合格者を出している。
同校も理系に進む生徒が多いことで知られている。和田孫博校長は言う。
「灘に理数系が好きな生徒がたくさん集まっていることは間違いありません。ただ、その割合は年々高まっています。かつては3対5で理系が少し高かったのですが、12年ほど前に1対3になり、今は1対4という感じでしょうか」
「失敗」には科学的原因
生徒の多くは中学受験のために塾に通っていたため、復習中心の学びのスタイルが染みついている。その感覚を取り払うべく、理科の実験やフィールドワーク、柔道など、頭だけでなく手や体を動かす授業を多く取り入れている。
折り紙を使って幾何の問題を解く「オリガミクス入門」も、その一つ。土曜講座の一つで、中2から高2までの生徒が受講できる。テキストをただなぞるのではなく、立体を理論的に理解することができるという。
「卒業生でノーベル化学賞をとった野依良治先生は、失敗には必ず科学的な原因があると話しています。実験や実践を通じて、挫折しても最後までやり抜く執念を身につけることができます」(和田校長)
高2への進級時には文理別のクラスわけがあるが、文理を選ぶことはどちらか一方を捨てることではない、と和田校長は指摘する。
「経済学部は文科系の学部になっていますが、数学の素養が不可欠です。心理学もネズミを使った実験をしたりする。学問を文系、理系の枠組みで捉えること自体が今やナンセンスとも言えます」
神奈川県の高校もしのぎを削る。私立では聖光学院や浅野が合格者数を伸ばし、公立では横浜翠嵐が東大に昨年の15人から約3倍となる44人の現役合格者を出した。