旅先で撮った白鳥。ひとりで過ごす時間をどう生きるか、新たな課題だ(photo 本人提供)
旅先で撮った白鳥。ひとりで過ごす時間をどう生きるか、新たな課題だ(photo 本人提供)

 しかし、前回からもう5年ですか! と同世代の先生とつい人生談議に。5年前は今の時代にはどんな子育てをすればいいのだろうと話し合ったのに、今回の話題は「子育てが終わったらどう生きるか」。「慶子さん、人生100年時代ですよ、まだまだ長いです」と先生は元気いっぱいですが、私はあまりそういう気持ちになれず、困惑するばかり。誰だって明日死ぬかもしれないし、あと何年生きるかはわかりません。これまではただ一家を養い子どもたちを育て上げねばと夢中で走ってきましたが、あとほんの数年で子育てが終わると思うと、無理をしてでも働く意味や健康維持の動機がわからなくなってしまいそうです。

「そんなに長い時間は……」「でも生きちゃうんですよ今の時代は。まだまだ頑張ってください」。溌剌(はつらつ)とした少し年上の先生に励まされて、次回の予約をとりました。子どもたちを守るためではなく、「ただ生きる」ということに不慣れな私は、これから心のリハビリも必要になりそうです。

◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。

AERA 2022年7月11日号

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