
「私は埼玉西武ライオンズのファンなので、ドームで観戦したりもしますけど、代表戦やライブのときはものすごい人ですよ。そういう時は近づかないようにしているんです(笑)」
1週間ぶりに外出したという女性。両手に大きなスーパーの袋を抱えている。
「久しぶりの外出なので買い込みました。スーパーの駐輪場はいつもは満車ですが、今日はガラガラだったので自転車で来られました。やっぱり人が少ないんですね」
取材を始めて2時間ほど、ふとトイレに行きたくなった。だが、トイレを探すも、「感染拡大防止のため」と閉鎖されているところばかりだ。この状況下では、トイレに行くのも一苦労だ。

午後5時を過ぎると、JR水道橋駅の周辺は通行が増え始めた。だが、駅の南側の居酒屋が集まるエリアは依然として人が少ない。店頭で弁当販売をしているところが多いが、ほとんどの人は立ち寄ることなく駅に向かっているのか。まるで寂れた商店街のようになっていた。シャッターを下ろし、臨時休業している店も目立つ。「マスク1箱2500円」と即売している人もいたが、購入している人はいなかった。
午後6時過ぎ。街頭に設置されたスピーカーからアナウンスが流れてきた。
「千代田区役所からお知らせします。千代田区では客引き・客待ち行為を禁止しています。街頭で店舗に案内しようと声をかけ、付きまとい、これらの目的で街頭に立つ行為は条例違反です。見かけたり、声をかけられたりしても、絶対に利用しないでください。客引きのない街を実現するため、みなさまのご協力をお願いします」
だが、路地裏の交差点には、客引きはおろか、通行人もまばらだ。

どこかで夕食をとろう。周辺をしばらく探していると、「期間限定出店」という看板が目に入った。「新型コロナウイルスにより被害を受けてしまっている生産者の皆様に、少しでもお手伝い出来たら幸いです」と書かれている。魚介系のラーメン店「大漁まこと」だ。この店で働く杉沼昌美さん(29)がマスク越しでもわかる笑顔で迎えてくれた。