【スナップショットの露出】
街でのスナップショットは刻々と変わりゆく状況を捉える撮影方法だ。
悠長に露出を測っていたら、いざ撮影しようと思っても、被写体ははるか遠くに行ってしまうだろう。
木村伊兵衛は撮影に出かけるとき、家の玄関先でライカに装着する外部測光の露出計をポケットから取り出して測光し、その測光値をライカにセットしてその日一日はその値でスナップ撮影に挑んだという話を何かで読んだ。
途中で天気が変わったらどうするのか、とか、夕方になったらどうするのかという疑問はあるから、都市伝説の部類である。しかし、参考にならないわけではない。
不意に路地から現れた人物が粋で魅力的だったから、撮らせていただこうとAE設定したカメラでさっとシャッターを切ったら……明るい服の人なら露出アンダーに、暗い服の人ならオーバーに、ということになる場合もある。
歩きながらでもその日の光線状態を確認しながら、日の当たる場所や日陰の場所のみを測光して露出値を覚えておき、状況に応じてマニュアルで露出設定をしておけば、どのような服の色にも露出が変わることなく対応できるはずである。
スナップショットは予期せぬ出来事を捉える。
だからAEを生かせというのは理解できる。が、街を歩くとき、被写体の色、反射率を意識しておけば間違いなく後処理をするにしてもラクだ。黄色い壁は反射率が高いから暗めの露出になることは覚えておきたい。
(文・写真/赤城耕一)
※『アサヒカメラ』2020年4月号より抜粋。本誌ではマニュアル露出の基本から露出計の使い方、ポートレートや風景のセッティング方法などを6ページにわたり詳細に解説している