政府は新型コロナの感染症法上の位置づけを見直し、「2類相当」から「5類」への引き下げを検討している。分類の変更についてどう考えるのか。東京都医師会・尾崎治夫会長に意見をうかがった。2022年12月19日号から。
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──政府は、新型コロナウイルスとインフルエンザ同時流行に備え、重症化リスクが低く、比較的症状の軽い人は自分で検査をし、自宅療養するよう呼びかけている。
東京都と東京都医師会は、病床稼働率が5割を超えたり、他の疾患の治療に支障が出たりといった、いわゆる医療が逼迫してくる状態にならない限りは、「医療機関で検査・治療します」と言っています。抗原検査にしても医療機関で実施した方が、正確に診断できるからです。
ただし、医療が逼迫してきたら、リスクが低く、軽症の方には、政府が呼びかけるような方法で療養してもらうしかなくなるかもしれません。
一般の方、特にひとり暮らしの場合、災害に備えるのと同様に、感染して自宅療養しなければならなくなった場合に備えて、5日間ぐらいの食料や飲料水、解熱剤や咳止め、検査キットを備えると安心です。検査キットは時間をおいて2回は調べた方がいいので、1人あたり2キットは準備しておいて下さい。
──政府は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を、季節性インフルエンザと同じ5類に変更するなどの検討を始めた。
全体的にみると、オミクロン株になって重症化率は下がってきています。飲み薬も3種類出ましたので、分類の変更を検討するのはいいと思います。
ただし、高齢者は季節性インフルエンザに比べると重症化率が高いですし、寝たきりの状態の方など免疫力が低下している人は、ワクチンを何回打っても抗体のできない方がいます。そういった高齢者には優先的に重症化を防ぐ治療ができるような仕組みを作るなど、高齢者の重症化を防ぐ体制をしっかり整備した上で、分類を変更するのが望ましいと思います。
また、5類になると、治療費は公的医療保険を使った一般診療になります。今のように解熱剤なども公費負担する必要はないと思いますが、重症化リスクの高い人や重症化した人の治療費もすべていきなり一般診療にするのかどうかの議論も必要です。したがって、5類に準じた「5類相当」というような、新たな分類を作ることも選択肢に入れて検討するといいと思います。
(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2022年12月19日号より抜粋