近現代天皇制研究の第一人者として知られるアメリカ人の著者が、日本は国内外の力の相互作用によって形づくられてきたというグローバル・ヒストリーの視点から、平成の皇室を分析する。

 ハーバード大学での講義や対話を中心に構成された本書で著者は、皇室の方々の言葉や行動、それらに対する国民の反応をもとに考察を進める。その上で、平成の皇室は、戦後憲法固有のさまざまな価値を含め、戦後体制を明確に支持してきたこと、戦争の傷跡をいやし、戦後を終結させようと努力してきたこと、美智子皇后が際立った行動を示し、重要な役割を果たしてきたことなどを指摘している。

 日本人が天皇について議論すると、感情的になりがちだが、本書は冷静に皇室のあり方を考える際の大いなる一助となるだろう。(大野和基)

週刊朝日  2019年3月15日号