作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。9人目のゲストはデータサイエンティストの宮田裕章さんです。
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大宮:最近、いろんな人と話してると、宮田さんの話がよく出て。
宮田:あ、本当ですか。
大宮:そうです。だけど、みんな、宮田さんのことをあんまり詳しく教えてくれなかった……。
宮田:なるほど。正体不明のまま、謎の場所に来たわけですね(笑)。
大宮:一応調べたんですよ。ネットに「データサイエンス」って書いてたけど、なんだろうみたいな。
宮田:簡単に言うと、科学を使って、社会をよりよくする、ということをやりたい人間です。
大宮:そこでデータを使おうと?
宮田:今の時代はデジタル、ひいてはデータが、社会のあり方を大きく変えていきます。この考えをベースに実践していくのが私の方式です。
大宮:ほう。やっぱりデータが世の中を変えるんですか。
宮田:データというか、まあデジタルですね。大量消費、大量生産の時代になって、お金がもっとも分かりやすく価値を示す手段になりました。ですが、これからの時代は、お金だけではなくて、データがさまざまな価値を可視化します。その上で、社会とかわれわれが、生き方そのものを考えていけるのです。
大宮:データが変えていく社会は、人に優しい社会?
宮田:デジタルだからこそ、寄り添えるものがあるんです。
大宮:例えばどんなことを?
宮田:今、シングルマザーに対するプロジェクトを行っています。日本のシングルマザーの貧困率は、途上国を含めても非常に高いのです。女性の働き手のうち、半分は非正規雇用なんですね。そこにもし病気になってしまったら……。貧困になる要因がたし算じゃなくて、かけ算で重なるわけです。けれども、たし算のように支援をする仕組みしかない。デジタルを使えば、かけ算のような形で、苦しみに寄り添う仕組みを作ることもできると考えています。
大宮:でも、シングルマザーの家庭すべてに戸別訪問できないですよね。どうやってデータを取るんですか。