『広辞苑』が10年ぶりに大改訂された。新たに収録した項目は1万で、総項目は25万となった。ページ数も140ページ増えた。しかし本の厚みは第六版と同じというから驚く。だが進化したのは製紙技術、印刷・製本技術だけじゃない。
新たに収録された項目を見ると、この10年で日本語がいかに変化したかがわかる。それは日本社会、国際社会の変化でもある。
象徴的なのが、たとえば「安全神話」だ。語釈は「安全に関する神話。根拠もなく絶対に安全だと信じられていること」で、用例は「原発の─が崩れる」。
10年前は原発が安全だと信じる人がいたのだ。
「スマホ」「スマートフォン」も、第六版にはなかったことば。
「様々な情報処理機能を具えた携帯電話。オペレーティング-システムを持ち、アプリケーションを追加して機能を拡張でき、多くタッチパネルで操作する。スマホ」と書かれている。
日本でアップル社の「アイフォーン」が発売されたのは2008年の7月。そういや、こんなものが日本で売れるわけがない、という人もいたっけ。10年先はわからない。
新しい項目が加わっただけでなく、語釈が改良されたことばも多い。
たとえば「炒める」は第六版で「食品を少量の油を使って加熱・調理する」となっていた。これが第七版では「熱した調理器具の上に少量の油をひいて、食材同士をぶつけるように動かしながら加熱・調理する」と詳しくなった。
断言する。辞書は時代の映し鏡である。常に新しいものがいい。
※週刊朝日 2018年2月2日号