世界中を旅しつつ、スラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。インタビューの基本は英語である。それもフィリピンで習得したアジアン・イングリッシュ。ブロークンであるがゆえに、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやり取りも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした“ありえない英会話”を紹介する本連載、今回のキーワードは、ハワイのホームレスを取材中に飛び出した「Get out(帰れ)」である。めったやたらと言われないこの言葉。どんなシチュエーションだったのか見ていこう。

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 ハワイにホームレスが急増するという特異な現象の背景を探るために現地に赴いた。そこで出会ったホームレスは個性的な面々で、非常に興味深い取材ができたと思う。その結果、ひとつの結論にはたどり着くことができた。

 行政の住宅手当の削減と家賃の高騰が要因となって、家賃の支払いができない人々が増えてホームレスが生まれていったのだ。これはハワイの負の部分であるのは間違いない。そのことは行政も把握しているので、楽園のイメージを守っていくために様々な改善策が実施されている。その一方で、いまだ改善の兆しのない負の側面も存在している。

 私がホームレスの取材をしている途中で立ち寄ったハワイ大学の近くにある公園でのこと。トイレまわりに何人かがたむろしているのが見えた。とりあえず、ホームレスの取材をしにきている以上は、声をかけないという選択肢はない。

「ニホンジンか?」

 あれこれ考えているうちに、向こうから声をかけられた……。日本語で。ここで困ったことになった。この場合、何語で返事をしたらいいものだろうか、と。

「Yes, I'm NIHONJIN.」(はい、ニホンジンです。)

(イラスト/majocco)
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 あれこれ悩んだ揚げ句に日本語交じりの英語で返した。

「Japanese are my friends. Welcome to Hawaii.」(日本人は友達だよ。ハワイへようこそ)

「Thank you so much. Could you talk to me?」(ありがとう。お話できませんか?)

「Yes, no problem.」(いいけど)

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