童謡『雪』の歌詞にもある「♪猫はこたつで丸くなる」。この歌詞からもわかる通り、猫は気温が低い冬の間、極力動かないように体力を温存しています。そう聞くと猫は冬が苦手だと思われがちですが、そうとも限らないのです。
室内で飼っている猫ならば、気温調節にそこまで気を遣う必要はないので、冬をそれほど苦手としないようなのですが、実は意外と気をつけなければならないのは、「春」といわれています。
暖かくなり、過ごしやすい季節であるはずの春が、猫にとってどんなストレス要因になるのでしょうか?
春はデリケートな繁殖の季節
かわいらしい「ニャー」という鳴き声とはまた違う、「ギャ~」といったけたたましい鳴き声をくり返す時期が猫にはあります。
その音量といったらかなりのボリュームで、深夜であろうが鳴き始めたらなかなかとまりません。蠢動・芽吹きの春は食物が豊富になることもあって繁殖の時期に適しているため、メス猫は2~4月にかけて繁殖のピークを迎えるといわれています。つまり「ギャ~」という鳴き声は、発情期を迎えた証拠なのです。
「オスなら大丈夫?」「去勢すれば大丈夫?」……、
そう思われる方もいらっしゃるでしょうが、そうとも限りません。メスの鳴き声は求婚の合図。それにオスもこたえようとするので、掛け合いが始まってしまいます。また去勢後の猫であっても春は繁殖の時期という習性が残っているため、去勢後しばらくはその習慣から離れられない場合もあるようです。
人間の転機は、猫も不安に
春といえば、就職、転勤など人間にとって大きく環境が変わるタイミングでもあり、新生活に伴って4月は「引っ越し」が多くなります。
もし、猫を飼っている家庭が引っ越しするとなれば、自分のテリトリーの中で生活する猫にも大きな負担がかかります。もちろん猫は「引っ越し、やだニャー」と言葉にして反対してくれないので私たちにはわかりにくいのですが、家が変わることは猫にとって大きな不安要素となります。
しかし、やむを得ず猫を連れて引っ越ししなければならない場合、どんなことに気をつければよいのでしょうか?
まず、来客が来たときにソファーの下に隠れてしまったり、お客さまに威嚇する姿を目にした人も多いですよね。このことからも、猫は自分の知らない人間が家に出入りするのを嫌います。
ですから、引っ越しの際に業者の人が何度も出たり入ったりすることは、猫にとってかなりのストレスとなりえます。対処法としては、「引っ越しの間はペットホテルに預ける」または「ケースに入れてお風呂場等に一時避難させておくこと」がおすすめ。また、引っ越し前から猫が使っていたトイレやおもちゃなどをそのまま、新居にも持っていくようにしましょう。猫は自分のにおいがついていることはわかりますから、「ここは自分のテリトリーだ」という安心感を与えることができます。
春の暖かさで食欲が低下!?
犬に比べて寒い冬が苦手という印象が強い猫ですが、気温が高くなる春は、猫にとっても過ごしやすい半面、気温の上昇にともなって食欲が落ちるといわれています。
もちろん、先ほどもお伝えした発情期や、環境変化によるストレスでも猫の食欲は落ちるといわれていますが、春の気温の上昇が猫の食欲に関係するのは、一体どういうわけがあるのでしょう?
家から外に出る猫にありがちな傾向といわれていますが、冬は体温を保つために、できるだけたくさん食べておく習慣が猫にはあるようです。春の暖かさは人間にとってはちょうど過ごしやすいものですが、猫にとっては冬の寒さからの気温上昇は、夏バテのような感覚になる場合があるのだそう……。
普通に動きまわっているけれど、なぜかエサは食べない……という場合は、ひょっとしたら「春バテ」状態なのかもしれません。
そうした場合、いつも同じエサをあげているのであれば、エサを変えてみるのもひとつの手ですが、愛猫に「春バテ?」という症状が見受けられたら、水を飲んでいるかどうかだけでも、飼い主さんはこまめにチェックしてあげてくださいね。
――自由気ままな猫ですが、一方でとてもデリケートな動物であることも確かです。
猫にとってはストレスがたまることも多い春こそしっかりとケアして、少しでも気持ちよく過ごしてもらいたいものですね。