寝そべりポーズのミャクミャクと記念撮影=米倉昭仁撮影
寝そべりポーズのミャクミャクと記念撮影=米倉昭仁撮影

「万博が成功するイメージや、日本の未来への庶民の思いを、必ずしも受けとめ切れていない感じがする運営事務局や行政府へのそこはかとない憤懣(ふんまん)や反動が、逆にシンボルマークやキャラクターへの人気として噴出しているのかもしれません。そのような心情が、万博への期待感と一緒にミャクミャクの『寝そべりポーズ』人気に表れているように感じます。この『微妙な反応』は、全く予測していませんでした」(原さん)

フレキシブルに形が変化するはずだった

 さて、ミャクミャクについては、その「原点」ともいうべきところで、まだ実現していない大きなポテンシャルがある。

 翌年3月に開かれた最優秀作品発表記者会見で原さんは、こう語った。

「このキャラクターデザインが評価されたのは、フレキシブルに形が変化していくという点です。このフレキシビリティーがどのように活用されていくのか、大変楽しみです」(同)

 ミャクミャクの作者・山下浩平さん自身も応募書類に、こう記している。

「このキャラクターに定まった形はありません。メインのデザインはあくまで形のひとつ。赤い部分は分裂し、青い部分は自在に形を変える。定まることはありません」

7つのデザイン形態

 山下さんは7つのミャクミャクのデザイン形態を選考委員会に示していた。「太陽の塔」をデザインした岡本太郎氏へのオマージュを感じさせるものや、カブトムシを連想させるものもある。

 つまり、“形が変化する”ことが、ミャクミャクの大きなアイデンティティーだったのだ。

「審査でも、多様にメタモルフォーゼ(変形)するキャラクターという点が評価されていたと思います。審査委員の中には東京五輪2020のピクトグラムをアルゴリズムで動かし、とても優れたビジュアルを生み出した井口皓太氏がいた。『彼のような才能を生かして、ディレクションを担ってもらい、動的な変化をどんどんしていったらよいのではないか』という提言を万博の運営事務局にしたことを覚えています」(原さん)

すぐにでも動かすべき

 先日、ミャクミャクはしゃべった。だが、形は変化していない。

「動かない(変形しない)キャラクターは、本来の潜在力を発揮できていないようで心配です。審査を担当した立場で言うと、今からでも遅くはないので、後半を盛り上げる意味で、すぐにでも動かすべきでしょう。かなり意表をついた七変化が期待できるはずですから、個人的にはそれを期待していきたいと思っています」(同)

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