名人戦の局面を盤面に再現する藤井聡太名人=2025年6月、東京・千駄ケ谷の将棋会館
名人戦の局面を盤面に再現する藤井聡太名人=2025年6月、東京・千駄ケ谷の将棋会館
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年8月25日号より。

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「相手の王を取れば勝ち」

 将棋というゲームをざっくり説明をする際には、そんなシンプルなフレーズがよく使われる。より正確に表現しようとすると、少しややこしいことになる。一例として、日本将棋連盟が2024年に定めた「対局規則」の第2条「将棋の性質と目的」には、次のように書かれている。

「対局の目的は、相手の玉将(玉)を相手よりも早く詰ますことである」(第4項)

「詰みとは、次にどのように応対しても玉が取られてしまうことを防げない状態をいう」(第5項)

 公式には「王」(おう)ではなく「玉」(ぎょく)と呼び、それを「取る」前の段階、動けなくした時点で勝負がつく……と語り始め、さらに細かな規定、レアケースまで語り始めるとキリがなくなるので、本稿でもこのあたりでとどめておく。

 同規則第6条第1項には次のようにも書かれている。

「対局は詰みまたは相手の投了によって終了する」

 対局者のレベルが上がると、詰みに至る前に、一方が「負けました」などと言って終局となる。この「投了」が存在するのが、将棋というゲームの大きな特徴の一つだ。

 現代最高峰のタイトル戦などでは、どちらが勝っているのか、観戦者のほとんどがわからないような状況で投了する例も見られる。そこで美しい終局図が残されれば、潔い対局者は称賛されることにもなるだろう。

 一方で「これはもう逆転のチャンスはほとんどないのでは」と見られたところから、劣勢の側が屈せずに指し続け、信じられないような大逆転劇が生じる場合もある。

 持ち時間の制限がある限り、対局者がいつ投了するのかは自由だ。そのタイミングを見て、敗れた側の心情を推し量るのもまた、観戦の醍醐味の一つと言えるだろう。(ライター・松本博文)

AERA 2025年8月25日号

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