
募集停止や共学化が続く“女子大受難の時代”に、日本女子大はなぜ志願者数を伸ばしたのか。飛躍の秘密は、学内のさまざまな思いを乗り越えて実現した、看板学部の再編だった。
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女子大学の志願者数は軒並み減少しており、京都ノートルダム女子大学が募集停止を決め、武庫川女子大学も共学化に踏み切る。そのなかで、日本女子大学の総志願者数は、前年度から10%も増えて1万643人になった。志願者数(一般選抜)は、全国の女子大で1位を誇る(朝日新聞出版『大学ランキング2026』)。
女子大の淘汰が進む最大の要因は、18歳人口の減少だ。文部科学省によると、1992年に205万人だった18歳人口は、2035年頃には100万人を切る見通しだ。大学間の競争は激しさを増している。
「日本女子大学は歴史とブランドだけで学生が集まる時代がありました」
日本女子大学の篠原聡子学長は過去を振り返る。
高度経済成長による人口ボーナス期だった約30年前までは、「名門女子大」のブランドが学生を引き寄せており、学部再編の動きは低調だった。だが、いまは「選ばれる理由」が問われている。
株分け戦略で改革が加速
そんななか、日本女子大学は大胆な一手に出た。看板学部であった家政学部の再編だ。
「筆舌に尽くしがたい大変さがありました。家政学部は伝統学部でしたから、再編には学内でもさまざまな思いがあったのです。しかし、家政学といえば『家庭の中の学問』という誤解を解かなければなりませんでした」(篠原学長)
家政学は本来、生活を科学的に捉える「実学」だ。多分野と結びついており、派生形として新学部を作りやすい。
「自分たちの強みは何か、社会から求められているものは何かを整理して、『強み』を押し出すことにしました。既存の学部から『株分け』して、カリキュラムや人事を補強して専門性を高めています」(同)
株分け戦略により、改革がここ5年で加速。1992年に「家政学部家政理学科」が独立して「理学部」が生まれ、情報科学やバイオテクノロジーが専門の教員を増やすなど、時代に合わせて強化。実態に合わせて2022年に名称変更をした。24年に「家政学部住居学科」が「建築デザイン学部」に独立。27年には「家政経済学科」が「経済学部(仮称)」になる構想だ。