日本女子大学の食科学部(撮影/岡田晃奈)
日本女子大学の食科学部(撮影/岡田晃奈)

「理系シフト」に見えるかもしれないが、新分野を増やしたわけではない。全て既存の学部を磨いて誕生した。

 今春、「家政学部食物学科」が独立して「食科学部」が開設。農学部という名称にすれば、幅広い受験者層を呼び込むことができると思いきや、アピールするのはそこではない。

 6月、食科学部食科学科の実験の授業を訪ねた。白衣姿の学生たちが、試験管の中で起こる化学変化に目を凝らしていた。この日のテーマは、体内で食品はどう分解されるのか。胃の消化酵素ペプシンが卵白をどう分解するのかなどを確かめるため、液体の色が変わるかどうかを観察していた。

 食科学科1年生の鈴木汐織さんは「私にドンピシャの学科でした」と話す。

 夜遅くに帰宅して疲れていても、簡単に食べられて栄養価のある食物って何だろう。そう考えて、食品開発の道を志し、学部を探していた。「実験、調理実習の機会がダントツで多い」と考えて入学を決めた。

「周りの学生も、やりたいことが明確な人が多いです。だからこそ、授業や実習にも積極的で、大学生活が楽しくなるんだと思います。私も『自分は自分』という気持ちで、のびのび学べています」(鈴木さん)

学生のモチベーションが高い

 ここで学びたい、という意志を持って入学してきた学生は、モチベーションが高い。そのために、特色を明確化していると篠原学長は言う。

「一般に食関係の学部といっても、農学系統からマーケティングまで幅広いですが、私たちの食科学部は『生活者』の視点から、『食』を科学的に深く読み解く学びが特徴ですが、家政学部の傘の中にあることで、文系の学びと誤解され、本来の学びの特徴が正確に伝わっていない側面がありました。今後ますます高度化した『科学的な観点』が求められていく中、生活者視点での『食』を科学的に広く深く読み解く学びにより一層の重点を置き、グローバルな『食』の課題に立ち向かい、未来の社会に貢献していく力を育てていきます」

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