
2016年から津田塾大学の学長を務め、女子の高等教育を牽引してきた髙橋裕子学長。就任以来「大学の女性学長を増やすべき」と、発信を続けている。今の閉塞した日本社会を活性化させるためには、女性リーダーの活躍が重要だ。女性リーダーの育成には「女性のエンパワーメントを促進するために女子大が必要である」と訴える。女子大学の役割、女性リーダーを増やすにはどうしたらいいのか、聞いた。
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――髙橋学長が就任した2016年と比べて、現状はいかがですか。
髙橋裕子(以下、髙橋) 就任した年に、日本IBM主催の、国公私立の学長が一堂に会する天城学長会議に初めて参加しました。46人の学長の中で女性は法政大学の田中優子総長と私の2人だけ。津田塾大学は教授の男女比がほぼ1対1なので、その時には部屋の景色が違って見えました。その場で「女性を増やしていく必要があるのではないか」と発言しました。理事や評議員にも女性学長を増やすことが重要だと、いろいろなところで言い続けています。
――なぜ、女性学長を増やす必要があるのでしょう。
髙橋 先日、新たなジェンダーギャップ指数が発表されましたが、日本は世界で118位と依然低いままです。アカデミズムの世界でもジェンダー格差は根強く、学長の女性比は以前より増えたといっても、791大学のうち13.9%にすぎません。これでは高等教育に、ダイバーシティーや公平さを求めることは難しい。「失われた30年」と言われますが、日本社会は低迷したまま活気がありません。活力を取り戻すためには、女性リーダーの存在が必要です。世界的にみても平和は実現せず、地球環境は悪化の一途を辿っています。今女性が協力して、声を上げることが重要です。
――女性リーダーの育成に、女子大はどのように貢献できますか。
髙橋 女子大学は女性をエンパワーする、特別な空間です。入学してから卒業するまで、男性の中に埋もれず、一個人として意見を述べる訓練を受けています。そのような教育を受けて育っていくのは、とても重要なこと。本学は創立以来「男性と協力して対等に力を発揮できる、自立した女性の育成」を教育目標に掲げています。学生はその理念に賛同しており、社会を良くするための変革を担うという高い志を抱いて、真摯に学んでいます。