
落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「万博」。
【写真】工事がストップして開館のめどがたたないネパールのパビリオン
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どうやら始まってるらしい、大阪・関西万博。
開幕から2ヶ月以上経って今ごろお題で出るなんて、ここまでなけりゃもうないと思ってた。
まだ行ってない。なにかついでがあれば行くのに、なかなか「ついで」はないものだ。
私が東京在住だからだろうが「行ってきた」という人が身の回りにいない。
唯一、3番弟子のいっ休が行ったらしい。あれはたしか5月だったか。
「行ったって?」
「行きました」
「どうだった?」
「虫がけっこういました」
「ニュースでやってるね。人はいたか?」
「けっこういました。ならびました」
「大屋根リングってのはどうだった?」
「おっきかったです。見晴らしもよかったです」
「なによりだ」
こんな会話で終わってしまった。土産くらい買ってこいよ、と思ったがまぁいいか。
「口に入りますか?」
先日、上方の先輩と会う機会があり、万博の話になった。
「万博会場で落語をやったのよ」
「いいですね、どっかのパビリオンで?」
「外や」
「外ですか?」
「外」
「暑くないですか?」
「暑いの暑くないの」
「暑いんですね?」
「そう、暑い。で、風がすごい。海っぺりやから飛ばされそうなくらい吹くときがある」