
物価高や為替、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年6月16日号より。
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5キロ4680円。
6月1日、近くのスーパーに米を買いに行ったが、まだ値段は下がっていなかった。毎日の食卓に欠かせない主食の価格がこれほど高いと、家計への影響は避けられない。
5月に就任した小泉進次郎農林水産大臣が備蓄米を放出して価格を2千円台まで下げようとしているとニュースで知り、なんとか価格が安定してほしいと願っている。
こうした危機の時こそ、人や組織の本性が見えてくる。
備蓄米を「動物のエサ」と揶揄する政治家は、問題解決より相手を貶めることに興味があるのだろう。
小泉大臣の挑戦をただ「実現できない」と批判する経済学者は、自らの知見を問題解決のためよりも批判することに使いたいのだろう。
一方で、問題意識を共有して具体的に動いている人たちもいる。
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営する会社の吉田直樹社長は、複雑で前時代的なコメの流通システムを改善するために意見書を提出した。
また、LINEヤフーの川邊健太郎会長は備蓄米が転売ヤーの餌食にならないようにヤフオクでの出品を禁止した。非常時にどう行動するかで、その組織や人が本当に何を大切にしているのかがはっきりと見えてくる。