竜王戦5組ランキング戦準決勝で勝った山下数毅三段=2025年5月2日、東京都渋谷区・将棋会館
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年5月26日号より。

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 将棋界の歴史を変える、新たなスターが登場した。

 5月12日、山下数毅三段(16)は竜王戦5組決勝で高田明浩五段(22)に勝利。竜王ランキング戦優勝とともに、決勝トーナメント(本戦)への進出を決めた。いずれも奨励会員としては過去に例のない、空前の快挙だ。

 2017年、当時14歳だった藤井聡太四段(現竜王)はデビュー以来一度も公式戦で敗れることのないまま、竜王戦本戦登場を決めた。

 今年6月に誕生日を迎えて17歳となる山下は、その藤井に次ぐ若さで本戦に進む。この先もなお勝ち進めば、藤井竜王への挑戦権もつかめる。将棋ファンはいま、山下の快進撃に沸き立っている。

 対照的に終局後の山下はいつもの通り、穏やかで落ち着いた様子だった。

「これまでと変わらず、一局一局丁寧に積み重ねていけたらと思います」(山下)

 若きニューヒーローが現れたのは喜ばしいことだ。一方で「それだけ強い人が、どうしてまだプロではないのか」といった疑問の声も耳にするようになった。

 このあたりの事情は複雑で難しい。手短にいえば、原則として四段昇段(棋士昇格)を年間4人に制限している現行の三段リーグの制度はあまりにも厳しい。山下の活躍にともなって、現行制度見直しの機運が高まるとすれば、それは自然な流れだろう。

 山下自身はこの先、現在6期目となる三段リーグで上位2位以内に入って、すらっと抜けてしまうかもしれない。それがかなわなければ新規定により、三段リーグ次点1回と竜王戦4組昇級の合わせ技で、四段昇段の権利を得られる道が開かれている(今期三段リーグで5勝した時点で確定)。さらなる竜王戦ドリームで山下挑戦となれば……。そんな未来まで想像してみるのも楽しそうだ。

(ライター・松本博文)

AERA 2025年5月26日号

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