老後資金についての相談実績も豊富なファイナンシャルプランナーの有田美津子さんによれば、繰り上げは思いがけず病気になってしまい働けなくなったり、自営業でうまくいっておらず生活が厳しいなど、想定外の事態による消極的な理由で選択せざるを得ない人が多いという。実際、厚労省のデータ(「厚生年金保険・国民年金事業年報」令和4年度)によれば、国民年金しか受給していない自営業やフリーランス、専業主婦の繰り上げ比率は25.7%に上るのに対し、会社員や公務員だった人の割合は0.7%という結果も見られている。
「60代前半は、働こうと思えば十分に働ける時代ですし、少しでも余裕があれば、運用もまだ考えられる世代。本当に働けなくなった時のことを考えれば、繰り上げは最後の手段で、65歳までは少しでも収入を得られる方向で考えた方がいい。そこまでまとまった額でなくとも、例えば月3万〜5万円でも収入があるのとないのでは、大きく違います」(有田さん)
(フリーランス記者・松岡かすみ)
こちらの記事もおすすめ 「こんなはずじゃなかった…」70歳で家計が破綻してしまう人の特徴 なぜ健康で蓄えある男性が年金「繰り下げ受給」の目論見を誤ったか