スイミングでは「応援席ハラスメント」が少なくないようだ。画像はイメージ(GettyImages)
スイミングでは「応援席ハラスメント」が少なくないようだ。画像はイメージ(GettyImages)
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 都内に住むフリーランスの女性(40代)は、長男が保育園の頃からスイミングスクールに入会させた。最初は水を怖がっていた長男だったが、次第に慣れると他の子より上手に泳ぐようになり、小学生になると選手育成コースに抜擢された。そして、選手育成コースになると「習い事」だったはずのスイミングの様相が少しずつ変わってきたという。女性はこう語る。

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「水泳はタイムという明白な結果が出るので、育成システムは完全にピラミッド型です。秒刻みで明確に序列化される上に、幼い時から異次元の才能を発揮するお子さんもいます。小2の長男が所属しているクラスでは、抜群に速い幼稚園や保育園の子が上がってきて、あっという間に抜いていきました。でも別に長男はオリンピックを目指しているわけではありません。水泳の楽しさを味わってほしいと通わせていますが、私と違って本気度の高いお母さんたちもいます。観覧席では、その人たちはとても目立っていて、だんだんと応援も熱を帯びていきました……」

 そのスイミングスクールでは、わが子のタイムに一喜一憂する母親たちがグループをつくり、スクールの観覧席に陣取るようになった。応援席で大声を出すので悪目立ちしているのは明らかで、距離を取っている保護者もいたという。

 そんな中で、ある日、選手育成コースのクラスで2人の男児がケンカをした。Aくんの母親はグループの中心的存在で、一方のBくんの母親はグループとは距離を置いていた。

「AくんとBくんのケンカは普通の子どものケンカだったのですが、親同士にもしこりが残ったようでした。そしてクラスを進級できるかどうかのテストの日に、Bくんがプールで泳いでいると、Aくんの母親が観覧席で『溺れろ!』とか『(タイムが)遅くなれ!』と罵声を浴びせていたので、本当に驚きました。泳いでいる子どもには聞こえないけれど、周囲の保護者には届くという絶妙な声の大きさでした。あの声量は計算していたんだと思います」

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