崔真淑さん
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 世界的に「チャイルドペナルティ」は⼤きな課題です。チャイルドペナルティとは、出産 のタイミングで、⼥性の賃⾦が⼤きく落ち込み、それが⽣涯にわたって影響することを指しています。背景には、20、30代という働き盛りに培われたキャリアや経験が、⽣涯賃⾦に⼤きく影響しうることがあります。つまり、20、30代で出産してキャリアを⼀時的にでも、中断または低速モードにすることの影響は極めて⼤きいのです。

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 最近の研究では、東京大学の⼭⼝慎太郎教授たちの分析で、⽇本のある大手製造企業では出産を経験した⼥性は、そうではない⼥性と⽐較して賃⾦が出産後10年間で46%も下落することが明らかになっています。 興味深いのは、⼥性に優しい働き⽅を提唱する企業が増えて時短勤務の制度は増えてはいるものの、結局は労働時間と⼈事評価や昇進は⽐例する傾向があることも、この研究では報告しているのです。ワークライフバランスブームといっても、結局は⻑時間労働=評価向上という仕組みはまだあるようです。もちろん、その背景には、適正な⼈事評価が、どこの会社も難しく、わかりやすい指標を用いようとすることにあると思います。世の中には、営業のように評価すべき成果物がわかりやすい仕事ばかりではないので……。

結局は仕事のために時間を使う

 ちなみに、⽇本のチャイルドペナルティのレベルは、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最悪クラスとも指摘されています。チャイルドペナルティの解消には、夫の育児参加や、社会体制を整えることが必要だと⾔われています。しかし、アメリカの研究では、たとえば、研究職の夫が育休を取得すると、育休の時間を論⽂執筆にあてて、結局は仕事のために時間を使っているなんて傾向も報告されており、それだけが回答ではない気もします(ちなみに、うちのパートナーは、申し訳ないぐらいやってくれるので、頭が上がりません)。 上記の⼈事評価の分析を⾒ても、そう感じます。

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