『with open』リリース記念スペシャルコラボレーションライブより
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『with open』リリース記念スペシャルコラボレーションライブより
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サウンド・クリエイター、fu_mouさん
サウンド・クリエイター、fu_mouさん
『with open』fu_mou
『with open』fu_mou

<DJはDJ、歌う人は歌う人って分かれていることが多いけれど、僕は“なんで自分で作った曲を自分で歌わないんだろう?”って不思議だった>

“インターネット世代、最強のメロディメーカー”との声も高いfu_mou(フモウ)さんへのインタビューも、ついにこれが最終回。ファースト・アルバム『with open』のこと、これまでの音楽遍歴、「ユニークだ」といわれる独自のライヴ・スタイル等について、ざっくばらんにうかがった。

―― アルバム・タイトルの『with open』にこめたものは?

fu_mou 曲が、今まで書きためてきたもの、なんというか大放出セールみたいな感じなので、ため込んできたものを開放するという意味で「open」……っていうのと、《with open arms, open eyes》という曲があるので。

―― 詞と曲は、どちらを先に書きますか?

fu_mou 大体、曲が先です。

―― 曲名も想像力をかきたててくれます。《You Know You Lied》は、“君は自分が嘘をついたことを知っている”という感じでしょうか。

fu_mou ぶっちゃけて言うと、僕の中では失恋ソングなんです。「自分の気持ちに正直になれない」というのと、「自分の気持ちをあえて隠していることを、うまく伝えられない、うまくいかない」、かつ「そんな自分が死ぬほど嫌いだけど嫌いになりきれない」みたいなイライラやモヤモヤをぶちまけてこういう形になったという感じですね。

―― 歌詞も、聴き手に問いかけてくるような印象を受けます。常にリスナーをイメージして創作しているような……。

fu_mou 他のシンガーやアイドルに楽曲を提供するときは、完全にそうですね。「リスナーさんがいて」っていうのと、「その子たちをどう見せたいか、その子たちが抱えているものをどう伝えたらいいか」と考えて作りますが、自分で歌う曲の場合は、けっこう内向的な歌詞が多いです。割とネガティブな性格なので、ダメな自分を払拭したいみたいな気持ちで書く時もあるし、ひたすら自分のダメなところを嘆いているみたいなところもあるし……でも最終的には、それをどうにかして打ち破りたいみたいな気持ちで書いていることが多いですね。「もし自分と同じような気持ちを持っている人がいたら、その人に届けばいいな」とも思います。

―― その内向的な感じに共鳴するリスナーも多いはずです。今回のアルバムは、全部一人で完成させたんですか?

fu_mou 基本的には、そうですね。レコーディングも自分でやったし、トラックダウン、ミックスも自分で。予算や時間のこともありましたし。《このメロディを君と》と《Shout》と《with open arms, open eyes》のギターも弾きました。

―― fu_mouさんのライヴは“ラップトップを操りながら、自らマイクを取って歌い上げるDJとロックシンガーがミックスしたような独自のスタイル”と言われています。

fu_mou あんまり、このスタイルでやっている人っていないんですよね。DJはDJ、歌う人は歌う人って分かれていることが多いので。でも僕的には、なんで自分で作った曲を自分で歌わないんだろうって不思議だった。自分が作った曲は自分で歌いたいと思うのが当たり前だと思っていたから。で、それをやり始めたら「ユニークだ」って言われて、逆に僕は「そうなの?」って訊き返したり。

―― アルバムではギターも演奏していますが、楽器は昔からやってらしたんですか?

fu_mou 中学から軽音部にいて、ギターとヴォーカルをやっていました。趣味でバンドをやっている期間は、けっこう長かったです。ピアノは小学生の時に、ちょろっと習っていた時期があったんですけど、途中でやめちゃって。メイン楽器は何かと聞かれたら、ギターですけど、曲を作るときはキーボードを弾いていることの方が多いです。

―― あこがれたミュージシャンは?

fu_mou 中高生の頃は軽音部だったので一応ギター小僧ではあったんですが、だからといって特定のギター・ヒーロー的な存在はいなかった。それに僕は「このアーティストが好き」っていうよりかは、「このバンドのこの曲が好き」みたいな、すごいピンポイントなところで見ていることが多いんです。あえて挙げると、日本のバンドだとeastern youth、海外だと、トゥールっていうアメリカのバンドが当時の憧れでしたね。結構、プログレッシヴっぽいグランジというか、ラウド・ロックで、ちょっと鬱屈した感じの……。それとeastern youthみたいな激情系というか、がなる感じのエモいところに、ルーツがあるんじゃないですかね。

―― 曲づくりの上で影響を受けたのは?

fu_mou メロディづくりというか、根底にある気持ちよさみたいなものは、たぶん、J-POPから学んでいるものが多いんじゃないかと思います。スピッツとか、eastern youthもそうですけど、ああいうポップさ、誰が聴いても気持ちがいい、歌っていて気持ちがいいみたいなのは、割とあのへんから学んでいる気がします。ただ自分用に書いた曲だとけっこう、がなっていたり、結構シンプルで突き通すメロディが多いんで、その辺は、ラウド・ロックの影響なのかもしれません。

―― 音楽大学ではどんなことを?

fu_mou 音楽音響デザインという、ポップスの作編曲とか、音響技術を学ぶ学科に通いました。それからパソコンで曲を作ったりするのに興味を持ち始めてという感じですね。当時、エレクトロニカがブームで、僕もコーネリアスとかYMOのメンバーがやっているSketch Showとか、あの辺がすごい好きで。そこから打ち込みにいって、クラブ・ミュージックにいってみたいな感じでしたね。いちばん仲のいい大学時代の友達に、livetuneのKzがいて、大学でずっと一緒にバンドをやっていて。エレクトロニカやクラブ・ミュージックについては、彼から影響された部分が大きいです。

―― バンドの時は、ギターを弾きながらオリジナルを歌っていたんですか?

fu_mou そうですね。大学時代は3つバンドに入っていました。ひとつは昔から好きだったラウド・ロックとか、ミクスチャーみたいな感じのやつをオリジナル曲ベースでやっていました。そこではメイン・ヴォーカルではなかったですけど、ツイン・ヴォーカルみたいな感じでやっていて。もうひとつはジャズ系のバンドで、僕はギターで、ヴォーカルは女の子で。この2つのドラムはKzです。もう一つが、「SUPERCARみたいなのがやりたい」ということで、ギター+ヴォーカル・ギター+ヴォーカル・マニピュレーターっていう編成のユニット。マニピュレーターはKzでした。

―― そのあたりの楽曲を、現在プレイすることはありますか?

fu_mou 僕だけが作った曲ではないし、メンバーとジャムしてできたものもあるし、自分の曲としてやることはないですね。Kzとは1年に1回あるかないかくらいのペースでennui luvっていうユニットをやっていて、その時に一緒に曲を作ったり、バンド時代にやっていたような曲をアレンジしたりとかは、たまにあります。あくまでも突発的なんですが。

―― 「fu_mouさんの曲はエモい」というのが、リスナーやアーティストの共通認識なんじゃないかと、僕は感じます。「エモさの鍵」は、どこにあると思いますか?

fu_mou (しばらく考えて)なんでしょうね……。僕、基本的に歌うことが好きなんですよね。で、ライヴでそれをみんなと共有したいっていう気持ちが強くて。こういうメロディを歌ってると気持ちいいよな!っていうか。

 メロディを書く時も同じで、「こういうメロディにしたら歌ってて気持ちいいよな」とか「こういう譜割りにしたら合いの手が入れやすいよな」っていう風に歌う人と、それを一緒に歌ってくれるオーディエンス両方の事を想って書くのが僕の常なので、その「共有できる気持ち良さ」みたいな部分にエモさの鍵があるのかもしれません。だとしたら僕の思いが歌い手にもリスナーにもちゃんと伝わっているという事ですから、こんなに嬉しいことはないですね。 [次回2017年 1/10(月)更新予定]

■fu_mouさんの最新スケジュール

12月17日(土)23:00~ 新大久保ユニークラボラトリー
「チャラアニ!」ゲスト出演

11月30日(水) 発売
TVアニメ「ブブキ・ブランキ 星の巨人」エンディングテーマ「so beautiful;-)
歌:種臣静流(CV:小松未可子) 作詞:タナカ零 作編曲:fu_mou